修行の成果と……
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後に、残ったジャギィ達は自分達が圧倒的に不利になったことを悟り、一目散に逃走していく。
蜘蛛の子を散らすかのように、瞬く間にジャギィの群れは姿を消した。
「……片付いたぁ〜」
「っ! あいつまだ……!」
神無が溜息混じりに言うが、小冬が腹に刀が刺さったままのドスジャギィが起き上がるのを見て声を上げる。
刀の刺さった部分から血を滴らせながら歩くドスジャギィは、足元がふらふらと覚束なかったがまだ戦う気の様だった。
もう長くは持たないと悟ってはいるのだろう。だが、それでも一矢報いなければならないという、群の長たる誇りを宿した目をしてヴォルフを睨み付けていた。
「このやろ……っ!? ヴォルフ?」
正太郎が銃槍を向けようとするが、ヴォルフはドスジャギィの前に立つ共に正太郎を『俺一人で充分だ』手で制す。
「……」
武器は構えたままだったが正太郎はヴォルフの指示通りに下がった。
対峙する一人と一頭。それは宛ら、互いの誇りを掛けた決闘のようだった。
しかし、ヴォルフは無手だ。刀は相対するドスジャギィに刺さったままで、ヴォルフの手元には苦無が一本。しかし、それは鞘に収められている。
ヴォルフは両腕を下げて何の構えも取らずに相手を見据えており、対するドスジャギィも歯を剥き出しにしながらも、ヴォルフを見据えている。
それを、神無達は固唾を呑んで見詰めていた。
沈黙がその場を支配する。耳が捉えるのは、その様子を見る各々の押し殺すような呼吸の音……そして――――――――小さな風が吹いた音。
舞い落ちる一枚の木の葉。ゆらゆらと不規則に揺れ落ちる様は風流でもあり、自然と季節の儚さを示すようでもあった。
それがヴォルフに近付いて――――――――音を立てて爆ぜた。
「ギャォォォォオオオオオオオオッ!」
その瞬間にドスジャギィは正に爆ぜたかの如く勢いでヴォルフへ突進した。渾身の一撃を持って頭を噛み砕かんと大きく開けた口がヴォルフに迫る――――――――――しかし、ヴォルフは既に刀の柄頭近くを右手で握り締めていた。
ヴォルフは刺さった刀をそのまま振り抜きながら、一本の踏み込みと共に、肘と肩、そして腰の全ての動きが一体となった一連の動作で、左の掌を鍔元の柄に叩き付けた。
その打撃は衝撃となって刀身へと伝達し、その威力はドスジャギィの胴を半ばから一直線に断ち切った。
振り返るように抜かれた刃と共に、その軌道に沿って鮮やかな半円を描きながら鮮血が散って行った。
谷間のような切り口から鉄砲水のような鮮血が噴出す中、命を失ったその体はゆっくりと地面へと倒れていった。
崩れ落ちたドスジャギィに背を向けたままヴォルフは、刀を軽く振って血を払い鞘に収める。
「夏空と梓は周囲を警戒。小冬と神無は二人を護衛に。神無
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