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久遠の神話
第七十二話 愛の女神の帯その九

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「そうそう、それはお寺もでね」
「生臭いというよりは何かな」
「世知辛い?」
「あまりいい意味でなく現実の話だな」
 そうなるというのだ。
「どうにもな」
「まあねえ。現実はそんな一面もあるわね」
 由乃も苦笑いでこのことを否定しなかった。
「いいことばかりじゃないから」
「そうした世知辛い話もな」
「どうしてもあるのよ」
 これもまた現実だ、二人はこのことも話した。
 そしてだった、広瀬は由乃にあらためて言った、周りはもう夕方で牧場にいる牛や羊も皆舎に戻っている。
「このことは絶対にな」
「絶対に?」
「適えたい、夢を現実にしたい」
 絶対にだというのだ。
「だから俺はだ」
「俺は?」
「いや、何でもない」
 剣士のことは言わなかった、彼女にも関わりのあることだが彼の中だけに留めてそのうえで打ち消したのだ。
「とにかく夢が現実になるか」
「大変でもあるけれどね」
「それでも現実になるのなら絶対にだ」
 それをだ、現実にしてみせるというのだ。
「何があってもな」
「気合入ってるわね」
 由乃は事情を知らないまま声を強くさせた広瀬に言った。
「また随分と」
「そうだろうな、ではな」
「これから二人でね」
 由乃は未来を確実なものとして彼に応える。
「牧場やっていこうね」
「わかった、それじゃあな」
「まあ二人って言っても」
 ここでまた現実を言う由乃だった。
「お父さんやお母さんもいるし」
「社員の人もだな」
「二人じゃないけれどね」
 牧場は二人では出来ない、しかも由乃の家の牧場はかなり大きく牛や馬、豚や羊も多い。鶏もいるのだ。
 それでだ、由乃はここでも現実を言ったのだった。
「何人もいるけれど」
「それでもだな」
「ええ、それでもね」
 絆としてはだというのだ。
「二人で頑張ろうね」
「それではな」
 こう話してそしてだった。 
 広瀬は今夢が目の前に来ていることを実感した、そして。
 次の日も自分の前に来た聡美にだ、こう言った。
 丁度朝の部活で馬に乗っている時に馬のグラウンドのところに聡美が来た、それで馬から降りてこう言ったのだ。
「是非だ」
「願いをですね」
「もうすぐ適いそうだ、だからだ」
「戦ってですね」
「願いを適える、絶対にだ」
「状況に変化があったのですね」
 聡美はそのことを察して広瀬に言った。
「そうですね」
「その通りだ、変わった」
 広瀬は口元で微笑んで聡美に答えた。
「あと少しでだ」
「そうですか、それでは」
「あと少しで適うが確実なものじゃない」
「それを確実なものにする為に」
「俺は戦う」
 そしてだというのだ。
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