『"Cannibal Candy"』
#2
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シンは痛そうな顔でクロスに殴り返してくるが、クロスはひらりとそれを回避してしまう。
「くそっ!何でお前だけ特待生なんだ!」
「成績がいいからだろ!」
「何でお前はそんなに成績がいいんだ!!」
「当たり前だ!お前はちゃんと硝子さんの話を聞いてたのか!?そもそも英語勉強したのかお前は!」
「会話できる程度にしかしてねぇよ!!」
「じゃぁこんな結果になるのなんて当然だろうが!!」
ぎゃーぎゃーと子どものようなやりとりと続ける二人に、夜々が
「夜々は知っています!雷真が血反吐を吐くような修行をして、誰よりも頑張ってきたこと!!」
と、声を掛ける。それを聞いたライシンは動きを止め、がっくりとうなだれる。
「だけどさ……夜々、お前は花柳斎ブランドが誇る『最高傑作』、《雪月花》の一体……そんな自動人形の相棒の俺が、こんなんじゃ……情けなくて……」
「雷真……夜々は、雷真のおそばにいられるだけで……」
はたから見れば、力及ばないことを悔しがる青年と、彼を慰める恋人のような構図に見えるだろう。だが、長くはなくとも、決して短くない時間を彼らと共に過ごしたクロスには、この後、何が起こるのかが目に見えている。
「……硝子さんに、会わせる顔がねぇ!」
ぴしっ!
空気が凍り付いた。
「硝子……硝子……硝子って!いっつも硝子のことばっかりぃいい!!」
夜々という者がありながらぁ〜!!と夜々がライシンの首をつかんでがくがく揺さぶる。
硝子はクロスとライシンの命の恩人だ。十年近い時を共に過ごしたクロスにとっては母親のような存在だが、ライシンは淡い恋慕の感情を抱いたりしている。夜々はそう言ったことにひどく敏感なため、ライシンが硝子のことを口にするといつもこうだ。
「……ずいぶんマシになったよな、夜々も」
クロスは、ライシンが硝子のもとに来たばかりのことを思い出す。あの頃、夜々はライシンに敵意をむき出しにしていた。一度は殺しかけたこともあったほどだ。
……夜々は、クロスにとっては妹のような存在だ。今でも、ライシンに多少なりとも命の危険があることに変わりはないが、それでも二人の関係が『敵対』では無くなったのはいいことだと思う。
「……それじゃぁ、俺は工房に戻ってるから」
「お、おう……うぐ!やめろ夜々!!息が、息が詰まる!!」
クロスはじゃれ合う二人に苦笑しながら、その場を離れた。
クロスの眼が虹色に輝く。《彼》の《本》に記録された『地理探知』の魔術回路が起動し、工房の場所を示してくれる。
「これが一度も言ったことの無い場所も探知できるなら一層いいんだけどなぁ……」
愚痴るクロス。
明日から
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