『"Cannibal Candy"』
#1
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々、ブレーキだ!」
「はいっ!」
ライシンと夜々の応答。二人はブレーキがあると思しき後方の車両連結部に向かって走り出す。クロスもそれに続く。黒いレバーを夜々が押し倒すが、しかし列車は止まらない。
「止まらない……」
「ブレーキ部部に故障があるのか……道理でとまらないわけだ」
「どうする、クロス」
「……止めるんだろう?」
「もちろん。あきらめるな、行くぞ、夜々!」
「はい、雷真!」
ライシンと夜々は素晴らしいフォームとスピードで、来た道を戻り始める。ロンドンの街はますます近くなる。リヴァプール駅はすでに目の前だが、列車はいまだにその速度を落とそうとしない。
「夜々っ!」
「はいっ!」
ライシンと夜々の、何度目かの短い応答。長い時を共に過ごした二人に、多くの言葉はいらない。
「雷真、上ですっ!」
ライシンと夜々が、駅の屋根を飛び越える。
「さすがの身体力だな」
クロスはライシンと夜々を見上げ、呟いた。
機巧魔術の利点の一つに、『《自動人形》と魔力をつりあわせることで、身体能力を高める』という物がある。これは、元来魔術最大の弱点であった「術者が無防備である」という、最大の問題を比較的解決できるものである。
「さて、俺も続くとするか。――――《本》」
クロスは、屋根が迫るその瞬間に、《彼》の魔術回路を起動させる。
「『第二十七頁』、開放」
その声に呼応するかのように――――クロスの両目が、虹色に輝く。同時に、クロスの背中に、天使のような翼が生える。そのまま屋根を飛び越え、汽車の第一車両に降り立つ。
リヴァプール駅を突っ切り、列車はさらに加速を始めようとする。だが、その瞬間、列車の前に夜々が躍り出る。
「ふん〜〜〜〜っ」
夜々が両手両足を踏ん張って、列車に強制的にブレーキを掛けさせようと試みる。しかし、列車は止まらない。その時、ライシンが右手をかざして、魔力の波動を放つ。
「夜々、森閑四十八衝!」
「んん〜〜〜〜〜っ!」
迸った魔力の奔流が、夜々にさらなる力を与える。ボゴッ!!という激しい陥没音と共に、列車の最先端が陥没する。と同時に、暴走汽車は後方を大きく脱線させ、そのスピードを弱め、停止した。
「ふぅ……」
安どのため息をつく夜々に、ライシンが近づき、笑顔で言う。
「えらいぞ、夜々。よく加減したな」
夜々の頭をなでるライシン。うれしそうにじゃれる夜々。
いつの間にか集まってきた野次馬たちが、ライシンと夜々の活躍に、歓声を上げた。
はるか遠く、日の
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