『"Cannibal Candy"』
#1
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の魔術師を表す言葉。《夜会》の勝利者を始めとする、英国王から特別な権利を与えられた彼らは、ありとあらゆる禁忌の適用外となる。有機生命体を素材とする《禁忌人形》の製作許可。使用禁止の《禁書》の閲覧許可。本来ならば許されない国王への優先謁見。超高階級貴族としての爵位。ありとあらゆる魔術階級制限の免除――――《魔王》の称号は、手に入れればそれこそイギリスの中では「何でもあり」になることができるものである。
当然、学院を目指すのだからクロスの目的も《魔王》になることである。だが、彼の場合、それはライシンや、歴代の《魔王》、そしてこれから戦うことになるであろう他の《夜会》参加者らとは、多少異なっていた。
「……」
目を閉じる。すると、今でも鮮やかに残る「あの日」の記憶が、脳裏に再生される。
純白の礼拝堂。虹色の光。かがやくような翼をもった、真っ白い天使。微笑んだ《天使》が手を振るうと、一筋の光がクロスの目の前に舞い降り――――ほんの一瞬の、断片的な記憶ではある。だが、クロスは片時もこの記憶を忘れたことはない。その名を知りたくて、日本だけでなく、世界中の文献を捜し歩いたが、ついぞその名を知ることはできなかった。
あの日であった《天使》の謎を解き明かす。そしてそのために、《天使》から与えられた、たった一つの宿命を達成しなければならない。
それこそが――――
「……っ!」
その瞬間。電車の車体が大きく揺れて、クロスの思考を現実世界へと引き戻した。目の前では、ライシンが相席の乗客をかばって、壁に激突していた。
「雷真!」
「……何をやっているんだお前は」
「そう言うくらいなら助けてくれよ……」
痛そうに顔をしかめたライシンは、助けた少女に「大丈夫か」、と聞く。八歳にも満たないであろうその少女は、「うん!」と笑顔で返す。そしてその時、再び車体が大きく揺れた。
「な、何だ!?」
「何が起こってるんだ?」
「止まらない!列車が止まらないぞ!!」
クロス達の席は運転席にほど近い位置にある。そのため、操縦士たちの焦りの声が聞こえる。
「夜々」
「はいっ!」
ライシンが鋭く言うと、夜々もそれに応じる。窓を開けると、ひらり、と車体上に乗り上がる。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫だ。必ず止める」
ライシンは不安そうな顔をする少女にもう一度笑いかけると、車体上に乗り上がった。
「俺も行くぞ」
「頼むっ」
クロスも続く。
列車の屋根の上から見たロンドンの街は、どんどん速度を上げて近づいていた。列車は本来ならば減速すべきカーブでスピードを落とさずに、危ういバランスで曲がる。
「夜
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