Development
第三十五話 居場所
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ステムで無理矢理制御することでデータを再現させているのか……なんてことを!)
自身が経験したことだから分かる。紫苑のときは彼の病魔という別の条件も組み合わさったとはいえ、半年もの間目を覚まさなかったのだ。それほどまでにコアの暴走は操縦者に負担をかける。
だからこそ、彼は一刻も早くラウラを救い出す、そう再び決意して簪に追加のサポート指示を出すが……。
『ふざ……けるなぁ! ラウラを放せ!』
予想外の叫び声が聞こえてくる。
その声に一瞬気を取られた隙に、急に出力を上げたラウラのパワーに押しやられて距離を離される。
直後に近くまで迫りラウラを取り押さえようとした一夏も、彼女に触れることすらできずに紫苑と同じ方角へとはじき飛ばされる。
『ぐっ、それがどうした!』
『待ってください!』
明らかに我を忘れている一夏を紫苑が止める。
「簪さん、申し訳ありませんが30秒もたせてください! あとできるだけ砂煙などをあげて、観客席からの目を遮断してください」
「了解です」
一夏をこのままにしては足手まといになると判断して、簪に状況維持を頼みその間に一夏を落ち着かせるべく彼に対峙する。
『邪魔をしないでください! アレは、千冬姉を穢したんだ! それにラウラが!』
『あなたはあんな紛い物が織斑先生の剣だとでも言う気ですか? 形は似ていてもそれだけです、あなたのその態度こそが彼女に対する侮辱です』
『っ!』
一夏の知っている紫音という少女の普段の物腰からは想像ができないほどの厳しい言葉と、自身に向けられる強烈なプレッシャーに彼は言葉を失う。そして少し遅れて言葉の意味を理解し始める。
『あなたはただ自分の怒りのままに戦うのですか? それとも、彼女を救うために戦うのですか? 今のあなたは正直、足手まといです。彼女は私と簪さんが助けますので、どうぞこの場から立ち去ってください』
紫苑とて、本来であればこのようなことを言うつもりはなかった。
一夏にとっての千冬という存在が重要なものであることは理解していたつもりだが、ここまで取り乱すとは思っていなかった。できれば少しずつ落ち着かせるのがベストではあるが、一刻を争う現状ではそうもいかずにキツい言い方になってしまっている。
『……すいません、落ち着きました。でも、俺もやります。俺に散々文句言ってきた癖にあんなものに振り回されているラウラもぶん殴らないといけませんから』
『あら、女の子に手を上げるのは感心しませんね』
『えっ、ちょっ、それは言葉の綾で……!?』
落ち着いたと言いつつも鼻息の荒い一夏に対して、紫苑は心の中でため息を吐きつつ茶化す。
それに対する一夏の反応はほとんど素であり、それを見た紫苑はようやく安心する。
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