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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第十六話 裏切りと本質
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少し時間を遡りアルフレートとティトゥスの戦いまで戻る。

「ちょっと待ってくれよ。煙草(シガレット)に火を点すから」

「まあ、そのぐらいならいいが…随分と格好も変わったな。元となった魂は煙草なんて不味いだけだと言ってただろうに」

「それはそれってことさ。それじゃあ、五分ぐらい待ってくれよ。今から火を熾すから」

そう言った直後アルフレートは粒子を重ね合わせティトゥスの目の前で火花を散らす。

「これで火は点いただろ」

満足か、とばかりにアルフレートは鼻で笑う。ティトゥスの方はというとバレたかといった風に顔を顰めていた。

「君の性格を僕は知ってるんだよ。相手を苛立たせて不意を突く。だからきちんと話し合う気は僕には無いんだ。不毛だろうだからね」

未だに司狼は動かない。玲愛を助けるためにはアルフレートを突破せねばならず、その上で再び地下道を通るために今いる位置まで戻らなければならない。

「さて、煙草を吸い終えるまで約三分…その間にゾーネンキントを逃がしてくれよ」

「半分もあれば十分だ。お前のほうこそこそしくじんじゃねえぞ」

司狼とティトゥスは互いに役割を決め動き出す。ティトゥスが構えたデザートイーグルでまずは牽制。大きな音が教会の鐘を鳴らすかのように鳴り響く。アルフレートは全く動じることなく影で弾丸を弾き、弾丸のようにした影で撃ち抜こうとする。

「―――『物質生成(Die Generation des Materials)』―――」

詠唱による自己暗示。ティトゥスは自身の魔力を高め正面に霊的加護を得た薄い壁を作りだした。

『物質生成(Die Generation des Materials)』、ティトゥスが持つ聖遺物の能力。銃弾、アサルトナイフ、軍刀、銃そのものまで、それが近代的な小火器による歩兵用兵器、或いは身近日常に溶け込んでいる簡素なモノであれば聖遺物の加護を持たせ生成できる。つまり限定的な無機物生成能力。今作り出した壁も良く見ればこの教会の壁を模したものであることが見て取れた。
もちろん生成するには魔力と明確なイメージが必要であり彼は普段から使っている銃弾以外の生成には数秒の時間を必要としていた。

「ほう、銃弾以外を作れたのか」

「自分の分体だろうにそんな事も知らなかったのかい?」

「興味もなかったしね。それに…」

足元の影が螺巻き、先端が螺旋状の槍のように形を変える。

「その程度の小細工で何とかできる筈も無いだろう」

二人を刺し殺そうと螺子のように鋭く巻いた影槍を放つ。それは容易く壁を貫いた。しかし、当然というべきか討ち抜かれるのを良しとすることも無くティトゥスはそれらを難なく回避し零距離まで近づき銃弾を放つ。同時に司狼も走り出す。


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