第35話 ヘルヘイムの森 光実&咲 A
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龍玄は脱力していた。何から考えていいか分からなかった。
貴虎だった。
確かに、貴虎だった。光実の兄だった。
「ミッチ、くん、だいじょうぶ…?」
『咲ちゃん…!』
龍玄は胸を押さえながら、ふらふらと咲の横に行って膝を突いた。彼からすれば小さきに過ぎる体を抱き起こす。
『ごめん、こんなケガさせて。兄さんが……本当にごめんっ』
「ん…げんきなら、よかった…」
咲は、痛くて堪らないはずなのに、にこりと龍玄に笑んだ。
(碧沙と同じ歳の子に気を遣わせてどうするんだっ)
龍玄は咲の小さな体を抱き上げた。
「ミ、ミッチくん?」
『兄さんを追いかけよう。それできっと拠点に出るはず。手当ての道具もあるだろうから、そこでケガの手当てをしよう』
「……ごめんね。めいわくかけて」
首を横に振る。迷惑などではない。むしろこのゲームに参加させた時点で、光実のほうが咲に迷惑をかけている。
『なるべく揺らさないように歩くつもりだけど、痛かったらすぐ言ってね』
歩き出しながら、ふと龍玄は思いつく。
咲の行動は何を根として現れるものだろうか。
普通の小学生女子が、彼女よりは大人の闘争の場に立ち、一時のパートナーを守るために自爆までするものだろうか。光実なら絶対にしない。
最近の子供はゲーム脳だから、と身も蓋もない片付け方もできるが、咲はそうではない気がする。幼いからといってこのゲームの底流のデッドオアアライブを感じ取れないとは思えない。
もしかすると彼女も、他人のためなら我が身を省みない紘汰のような性格かもしれない。
そう思うと、龍玄は何が何でも咲を助けてやりたい気持ちに駆られた。
兄を尾けて辿り着いたのは、夜襲でも受けたかのような有様のキャンプだった。
龍玄は咲を抱えたまま、幹の陰からキャンプを覗く。無人のようだ。
奥にある大きいクラックから見られないよう、龍玄は木の陰から陰を移動し、潰れたテントの一つに潜り込んだ。
『気分はどう? 咲ちゃん。痛む?』
「ん…さっきよりマシ、かな」
龍玄はテントの崩落でもちょうど潰れてなかった棚を開け、救急箱なり何なり置いていないか調べてみた。するとお誂え向きに、小さな救急医療セットを見つけられた。
光実は一度変身を解いて、医療セットを取り出した。中身は包帯や消毒液、湿布とソーイングセットが入っている。光実はその中からありったけの湿布を出した。
「骨や内臓にダメージがあったら僕にも手が出せないから、とりあえず痛み止めにしかならないけど」
鎮痛全般に効く錠剤を咲に渡し、光実は、トレーナーをめくった咲の肌に湿布を貼っていった。
下腹から鳩尾にかけて湿布を張り終わ
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