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この夏君と・・・・・・
想いの芽吹き
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そうにしないところがいいよな〜」「王様も陥落かな」「美少女に勝てる男はいないってことだよ!」

 俺に聞こえるようにあからさまにしてやったり顔をしている男子どもを見てもう……もう、殴っていいですか?
 そんな俺の殺気じみた感情に気づいたのかもしれない夏目がこちらに顔を向けた。そして――――そしてドヤ顔しやがったっ!

「くっそ、夏目えぇぇ、次こそはギャフンといわせてやるっ!!」
「カナタ、それ悪役のセリフだからね? それにギャフンとか死語だよ……くくっ」
「笑うな馬鹿っ」

 ああ、むしゃくしゃする。
 こんなことでむかつくようなところも王様とあだ名が付けられる理由の一つなのだろうか。

「結局カナタは何点だったのさ」

 突然そう聞かれた。そう言えば満点じゃなかったとしか言ってなかったな……。

「九十五点だ」
「へえ、一問ミスじゃないか。どこで間違ったんだよ」
「最後……」
「ああ、あれ難しかったよな、俺もわからなかったよ」

 違う……本当なら解けた筈だ。ただ時間が足りなかった、いやそれも正確には違うか。
 俺は今回事前に勉強していなかったから、問題自体を解くことは出来たが時間がかかった。それでも、最後の問題に辿り着いた時全力で解いていたら間に合うはずだった。

 ――なんで夏目のことが頭から離れないんだ!

 そう、あの時俺はテスト中なのにもかかわらず夏目のことを考えてしまったのだ。気づいたらテストは終わってしまっていた。
 ああ、馬鹿馬鹿馬鹿!!
 あの時頭の中にあったのはいくつかのビジョン。
 ――敵と対峙していた時の凛々しい少女の顔
 ――俺と契約するときの昂ぶった少女の顔
 ――契約の……キス
 そういえば契約の時は余裕が無くて気付かなかったけれど、

(あれって、俺の初めてのキス、だったんだよな)

 俺は意識せず自分の唇に触れた。

(夏目の唇柔らかかった……な)

 初めてのキスは血の味がした。
 鉄っぽい味だ。けれどその時俺はそんなことに気づいてはいなかった。
 余裕が無かったから。勿論そうだ。
 でも――
 本当にそれだけだったのか?
 今まで感じたことのない、胸の真ん中のあたりが芯から暖かくなるような……。

 駄目だ、これ以上考えたら駄目だ。
 俺は、クラスメートとして、夏目の契約者として、普通に接するだけ、そうそれだけだ。
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