第33話 ヘルヘイムの森 光実&咲 @
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ロックビークルが停まったと思ったら、月花たちは“森”に入っていた。
『咲ちゃん、大丈夫?』
『め、目が回りました〜』
まさかバイクであそこまでツイストするとは思いもしなかった。
頭をくわんくわんさせていると、龍玄が先に降りて月花に両手を差し出した。月花は龍玄の両手に手を預けて、ぴょこんと後部座席から降りた。
『ありがと、ミッチくん』
『どういたしまして』
月花は手を離すと、少しだけ走って行って、“森”を見回した。
確かに外観こそ森だが、何か得体の知れない感じがする。まるでこの“森”そのものが生きていて、葉の一枚一枚が月花たちを見張っている気がした。
『ここがロックシードの生る森?』
『そうだよ。そこの果物、もいでごらん』
月花は龍玄に言われるまま手近な果実をもいだ。すると果実は月花の手の中でロックシードへと形を変えた。クルミのロックシード。レベルはC+だ。
『うわっ。ほんとだあ。すごーい! ロックシードってこんなふうにできるんだあ』
ファンタジーな現象に月花は龍玄の目も忘れてはしゃいだ。ロックシードでなくとも、知った品物がどういう製造過程を経て出来るかを見ては、はしゃぎたくなる。だがすぐ、いけないいけない、と頭を横に振って、自分の両頬を叩いた。
『それで、ミッチくん。あたし、何すればいいの?』
『とにかく白いアーマードライダーが出てきてからだね。できるだけ僕らで注意を引きつけるんだ』
『オトリ?』
『……平たく言えばそう。ごめんね』
『いいよ。ヘキサとミッチくん二人ともが気にしてるんじゃ、あたしだって気になるし』
月花は龍玄に笑った――といっても、マスクがあるので表情は互いに分からないのだが。
その場に留まっていてもその「白いアーマードライダー」に会える確率は低いので、二人は適当な方向に歩き出した。
『前々から思ってたけど、咲ちゃんって本当に碧沙と仲がいいんだね』
『うん。マブダチっ!』
いぇー、と月花はVサイン。こういう小さい子ならではの所作にはほんわか機能が付いている、とはダンススクールの講師の談だ。少しでも光実の癒しになればいいのだが。何となく、このゲーム中の光実はピリピリしているようだったから。
『今回のこと、碧沙が出るから咲ちゃんも出てくれたんでしょ?』
『んー、まあ、そうなるのかな』
言葉を濁しはしたが、碧沙が危険に飛び込むのであれば、咲も一緒に行きたいというのは、室井咲の偽らざる想いだ。
『本当は僕と碧沙とで何とかしようと思ったんだけど、あの子、一度決めたらテコでも変えないから……やっぱり、ごめん。碧沙が行くんなら君も来てくれるんじゃないかって、心の底で計算してた部分も確かにあった』
『ん、ごめん
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