白き蓮は折れず
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何を信じていいのか分からない。
どうすればいいのか分からない。
何がいけなかったんだ?
私には何が足りなかったんだ?
ただ、私はこの地を守りたいだけなのに。
ただ、人が理不尽に殺される事の無い平穏な地を作って来ただけなのに。
仲良く、呆れながらも、力を貸してくれたし、皆で作ってきたじゃないか。
なのに何故……こうも簡単に……
渦巻く思考のままに茫然と立ち尽くす私の頬を打ったのは星だった。
「目は覚めましたか? 今、あなたがすべきことは?」
乾いた音と同時に耳鳴り、次いで凛とした声が耳に響き漸く思考が正常に回り出す。
そうだ、私が今すべきことは――――
「牡丹、残りの糧食でどれくらい持つ?」
「切り詰めて消費したなら後二十日は持ちます。この城に蓄えていた分もありますし」
「他に不調を訴えている部隊は?」
「ないです。私の第二部隊だけ次に食べる糧食を消費したので」
「ただの食あたりという可能性は?」
「ありえません。汁物を煮詰める水は同じモノを使っていますし、私達は今回のモノより古い糧食を既に食べたのですから。ネズミや虫の心配は、料理にうるさい店長の忠告を聞いて保存方法に手を加えている為、まずありえないことを私達三人だけは知っているはずです。それに食あたり程度なら食べた者の幾人かは無事なはずで、それがいないという事は……」
問いかけの答えに気が狂いそうになるが一つだけ、最後の希望とばかりに聞いてみる。
「……敵の間者による混入の疑いは?」
「……第二部隊だけを狙う意図が分かりません。間者が混入するのなら、間違いなく一番精強な白蓮様の第一師団の第一部隊、もしくは私達三人が食べる分を狙うでしょう」
自身の足元が崩れ去るような感覚がしてよろけてしまう。急ぎ、牡丹が私の身体を支えてくれた。
どうして? 何故? いつから? 何の理由で? 何が目的で?
殺すつもりの毒では無いのも相まって、いくつもの疑問が頭に浮かび、さらに目の前に叩きつけられた事実が頭の中をかき乱す。
私は、部下に裏切られたのか。
ずしりと鉛の塊が腹に落ちたような感覚が重く圧し掛かり、悲哀の感情と自身への激情が心の全てを支配し始める。
それでも、星が打った頬の熱さが思考と心をどうにか繋ぎ止めてくれていた。
「なら……本城からの救援は……」
「絶望的かと。返答の伝令は道中で、もしくはその報告すら届かずに揉み消されている可能性が高いです」
現実は非情だった。この時点で倍以上の兵力と相対する事が確定し、勝機の多くが消えてしまったと言っていい。いや、まだ戦況を判断して他の場所が救援を送ってくれるという希望もある。私はこれまで幽州の地で絆を繋いで来たんだ。何を弱気になっている公孫伯珪。私はこの地を守る太守、いついか
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