白き蓮は折れず
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……ふらついてしまった。
膝を付きそうになるが一人の兵士が咄嗟に抱き止めてくれる。
「我ら白馬義従はあなたの義に従う部隊。あなたの望みが我らの望み。あなたの意思が我らの意思。例え地獄の果てであろうと、どこまでも従って行きます故」
笑顔で迎える部隊長の言葉は私の胸に響き、心を温かく包んでくれた。
気付けばまた涙が頬を伝っていた。
私には仲間がいる。私を信じて従ってくれる者達がいる。
きっと星や牡丹から言われただけでは心が壊れていた。立ち直る事も出来ずに屈していただろう。
彼らはずっと支えてくれた、私が作り上げてきた一番の宝だった。
私はこいつらの王として、今こそ相応しい姿を見せなければいけない。
一人で立ってからぐいと涙を拭い、腹に力を込めて抑え込み、彼らに笑いかける。私の頭はかつてないほどに冷静に戦の思考を行い始めていた。
「ふふ、バカ共め。なら地獄の先まで付き合って貰う。まず関靖を止めに動くぞ。思い出せ、シ水関で袁家が行った策を。必ず分離策につなげてくるだろうから敵を跳ね返しつつ、薄い所を突いてこの城から離脱し、戦線を下げるぞ」
軽く指示を出すと床に伏していた牡丹の第二部隊が出てくるのが見えた。
彼らはもう止めても聞かないだろう。ここを死地と決めているからこそ出てきたんだ。
「関靖の第二部隊は敵右翼の攪乱に動かせろ。帰ってくる道の確保を私の第三部隊と共に行わせる」
短く返事をして兵達が動き出す。城壁を降りきると私の愛馬が既に準備されていた。白馬義従第一部隊と共に。
馬に飛び乗り、私を熱い瞳で見つめる兵達に向かって大きな声を張り上げた。
「聞け! 我が忠臣達よ! この地を長きに渡り守り抜いてきた勇者達よ! もはや多くを語るまでもないだろう! 一つだけお前達に伝えておく! ……皆の事が大好きだ! 皆でこの地を守ろうじゃないか! 全軍、私と共に戦場を駆けよ!」
言うが早く馬首を前に向け、兵達からの歓喜の声を背に浴びる。
こんな赤くなった顔は見せられないからな。
そして私達は戦場へと飛び出した。
その日の戦に於いて袁家は甚大な被害を被った。
麗羽の仕掛けた牡丹を引き込む策は白蓮の機転によって防がれ、事前に指示された通りに包囲網を組んだ兵達は死兵の如き公孫賛軍に蹂躙される事となった。
ただ、公孫賛軍の被害も多大なモノであり、相応の兵を失ってしまった。
包囲網の薄くなった所を突破した公孫賛軍は一つ戦線を下げる事とし、一つ後ろの城へと引き返していく。
袁紹軍は追撃を仕掛けるもあまりの士気の高さに攻めきれずにいたが、此度の戦場に一人だけ現れなかった将が姿を見せる。
張コウは少数部隊を率いた伏兵によって後退中の公孫賛軍の横を突いた。
彼女が率いていた者は袁家の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ