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乱世の確率事象改変
白き蓮は折れず
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その姿に、敵も味方もしばし見惚れてしまった。
 しかし、見惚れずに瞬時に動いた者が二人。城壁を駆け下り、控えていた兵全てに号令を掛けはじめる。
「我らの力を示す時です! 敵総大将が眼前にいる今を逃してなるモノですか! 白馬義従第二師団、出ます!」
「クク、我らが主は全てを踏み潰す事をお望みだ! 命を惜しむな! 名を惜しめ! 趙雲隊、白馬を守る龍となれ!」
 彼女達は心底楽しそうな、嬉しそうな笑みを湛えて指示を出し続けた。


 その時、外で麗羽は……不敵に笑っていた。
 これでこそ、自分と共にあって欲しい誇り高き白馬長史だ。
 麗羽は今回の裏切り者の頸を使った策を是としていた。
 郭図が言ってきたのだ。この頸を使えば公孫賛の誇りは折れるだろう、と。
 さらに、折れた所に連合での公孫賛の友が出した攻城戦における策を使い追い詰めるべきだ、と。
 だが、麗羽は白蓮が折れないと分かっていた。
 そんな生易しいモノではないのだ。公孫賛が作って来た幽州という家は。自身が憧れて止まない、本当の絆で結ばれた土地なのだから。
 その程度で折れるならば、わざわざ彼女の王佐が口を酸っぱくして公孫賛を生かせというはずは無い。
 張コウもそれに納得し、策を講じる事に乗った。曰く、捕えるのに一番効率がいいからだ、と。
 張コウは先に動き始めている。
 郭図は読み違えたのだ。彼女達の誇りを、彼女達の想いを。
 そして麗羽は信じていた。白蓮やその臣下達が誇りを守る為にこの策によって城から出てくる事を。
 笑みを止め、彼女は冷静に撤退の指示を出す……わけでは無く、先程までの堅苦しい言葉を投げ捨てて、いつものようにバカの振りをする。
「一度引きますわよ! 打って出てくるなんて聞いてませんわ!」
 大将の焦りは敵味方の全ての兵に伝わる。
 急ぎ後退し始めた部隊に対して城壁の上から凛とした声が耳に入った。
「我が忠臣達よ! その力を以って侵略者を踏み潰せ! この大地から追い払え!」
 疾く、城壁の上の全ての者達が動き出す。主の命は放たれた。ならばそれに従うのみだ、と。
 逃げながら麗羽は微笑んでいた。
 郭図は既に勝利が確定したとしてこの場から離れた。よって生かして捕える事が容易になる。
 袁家上層部の決定は聞いている。
 苦渋の果てに従えられるのならば良し、と夕が言いくるめたと張コウから報告されている。
 それでも、反抗の芽を気にして亡き者にするのが最善とされている為、生かしきれるかは麗羽達の手腕に任されている。
「張コウ、顔良、文醜に伝令。すぐに対応を、と」
 伝令が走り出すと同時に城門が開ききり、公孫賛の軍は怒りのままに袁紹軍の後背に――――激突した。


 †


 夕暮れの戦場を見やるのを止め、城壁の端から下りると
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