白き蓮は折れず
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何故、救援に来てくれるはずの上司が頸だけとなって我らの前にいるのか。何故、敵の手にそれがあるのか。
疑問が頭に渦巻く中、唐突に突きつけられたモノを受け止め、瞬時に悟った者は少ない。だが、少しずつ、絶望の事実に気付き始める。
我らに救援は来ないのだ、と。
真実を知る者達は三者三様の反応を行う。
冷徹な瞳で頸を睨みながら敵の思惑を看破するため思考に潜り始める牡丹。
不快そうに眉根を寄せるも、城壁の兵の状態と白蓮を確認する星。
白蓮は……ただ無感情な瞳で麗羽を見ていた。何を思考するでもなく、胸の内に来た喪失感は彼女の中の何かにひびを入れた。
「この者の名は張純。お前の臣下であった者のはず。愚かしい事に、裏切りという愚行を侵して我が軍門に降ろうとした。ただの恭順ならば命くらいは許したやもしれんが、この者はお前の軍に毒を盛ったと語った。我らが戦いは大いに穢された。覇道に於いて智を競う搦め手ならば許されようとも、卑劣な外道行為など許されない」
高らかに綴られた言葉を聞いた全ての兵にどよめきが走る。
敵に打ち倒されたのではなく、自分から我らの主を裏切ったのか。
張純が古くから尽力してくれていただけに、彼らに伝わる衝撃は大きなモノだった。
「だが、臣下の管理も王の務め。裏切りを許してしまうのは王の力不足によるモノであろう。さらに毒という悪辣な手段を使う者を見抜けなかったお前の力不足によって、兵達は苦しんでいるのだ」
耳を打つ言葉は白蓮の心を容易く切り刻む。
悲痛に表情を歪ませ、片手で胸を抑え付けて息荒く、彼女は膨大な汗を流し始める。それでも彼女はまだ折れない。屈するを良しとせず、膝を付く事も無く、麗羽の言葉の続きを聞き続けていた。
「公孫賛。お前の力は王足りえない。しかし、外敵から幾度となくこの地を守り通して来た精強な力を失うはあまりに惜しい。今、投降して従うのならば、全ての兵の命も、お前自身の命も保障しよう」
王足りえない。その言葉は彼女の心を酷く傷つけた。誰よりも努力してきた彼女を一番苦しめる言葉だった。
一人の友である男が認めてくれた、一人の友である女が認めてくれた、一人の絶対の忠臣が認めてくれた、その自分を、自分が行ってきた全てを打ち壊す一言だった。
私の力不足で、私のせいで、私が治めていたから……。
彼女の心はもう壊れる寸前まで追い詰められてしまった。それでも……彼女はまだ立っていた。
自分の足元が崩れ去りそうになりながらも折れない。奮い立たせてくれた二人の存在を近くに感じていたから。兵達の突き刺さるような視線が感じられたから。この大地がどのような場所であるか知っていたから。
彼女の将たる二人からは莫大な怒気溢れたが、どうしたことかそれを鎮めてふっと息を一つついて笑う。下らない、と言
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