白き蓮は折れず
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っぱり止められねぇよ。お前らの思惑も全部読み通り行くだろうからな。俺もそろそろ次に移るか」
ぶつぶつと一人今後の展開を積み上げながら彼は朝焼けの空の下を歩く。
自分の策を止めると言い放った一人の女を嘲りながら。
†
体調を崩した兵が出てから二日目、籠城戦が落ち着き、敵が陣に引き返して行った夕暮れ時の事。
兵達の士気は大きく下がりかけていたが、白蓮が牡丹の第二部隊以外の全ての兵を集めて叱咤激励を行いなんとか持ちこたえる事に成功した。
食事を運んで来た兵からその話を聞き、療養の為に隊舎内に横たわる兵達は涙を流した。この大事な時に自分達が戦えないなど末代までの恥では無いか、我らが主や仲間達は家を守る為に戦っているのに、と。
その兵達に対して、白馬義従第二師団長である牡丹は隊舎の周りに残りの部隊を集め、ある男の言葉を少しだけ借りる。
「お前達の悔しい気持ちも、無念も、守りたいという心も……全ての想いを私達が連れて戦います! ただ、自分で想いの華を繋ぎたいというバカがいるならば、今は少しでも休んで力を溜め、時機を見て共に戦うのを許します! 我ら白馬義従第二師団、白馬長史の願いを叶える為に、心を一つに命を賭けろ!」
牡丹から高らかに放たれた言葉に続き、他の部隊の兵から口々に激励の言葉が飛ぶ。
仲間の兵と主の片腕からの激励の言葉は床に伏している兵に希望と覚悟を与えた。
また、その様子を見ていた全ての兵達の士気は爆発的に上がった。
その直後、城壁の上に待機していた者から声が上がる。
「敵襲! 西より敵の影あり! 数は先と同じ程です!」
今日までこのような事は無かったが、敵も焦れて来たのだろう。遂に本格的な攻城戦に切り替えてきたという訳だ。いくらでも来るがいい。死兵の如く戦う覚悟を皆が持った。後悔するのはお前達の方だ。
白蓮は兵を鼓舞し、籠城戦の指示を出し始める。
しばらくして、城壁の近くまで来た敵から一騎だけ突出して来る影があった。
地平線に沈みかけている西日に照らされ、麗羽の金髪は光り輝いていた。彼女は王として、荘厳な空気を纏って普段の彼女からは想像する事も出来ない口調で語りを行い始める。
「公孫賛よ! 此度の覇の第一歩たる戦に於いて一つの不幸が起きた事を口惜しく思う! これを見よ!」
大きな声と共に掲げられた腕には、救援依頼を出した、裏切りの疑いが掛かっていた自身の部下である張純の頸。麗羽に長い髪を引っ掴まれて垂れ下がっていた。
頸を見た白蓮はすぐにその意味を理解し、覚悟を高めていたはずの心は再度かき乱される。まだ、これだけの疑いがあったとしても、心のどこかでは信じていたから。その甘さが彼女の良さと共に一番の弱点であった。
対して、城壁の上で頸が誰なのか気付いた兵達は息を呑んだ
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