白き蓮は折れず
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う。そして毒による高熱では水が多量に必要で、病との判別が難しいので隔離と管理に手間を取られる事だろう。
郭図の最後に語った幽州の人民の反感については、侵略を行った側がその地を従えるのは容易では無いのはあたり前の事であるが、公孫賛の治める各地人民からの人望や信頼は尋常ではない程に高いので通常よりも手間と時間が掛かる。
民の反感を抑える為にわざわざ烏丸に攻めさせ、それを袁家の軍がそのまま抑える形を取ろうとしているのだ。
民の心は自身の平穏に向くのが当たり前であり、治める主が変わろうとも、たとえ侵略してきた側であろうと身の安全が保障されるのならば少しでも感謝の念を持つ。
袁家を新たな幽州の守り手として確立させる為だけの生贄が烏丸。
この戦の後、袁家が過剰な圧政を行わなければ、公孫賛が降伏していたならばもっと早く守れたのにと、そんな噂が幽州の地に蔓延するだろう。
今まで守ってきた彼女に全ての悪意が向く。彼女の愛した家が、脆くも崩れ去ってしまう。この荒れた乱世に於いて移ろいやすい人心は、例え逃げる事が出来たとしても、もう彼女には戻る場所を与えてはくれない。
そして何が起こせるか。そういった民の心境は利用するに容易く、彼女自身への刃となり替わる。
公孫賛はそれを知らず、今も尚、家の為にと戦い続けているのだろう。
そう思って、二人は愉快そうに笑い続ける。
「ああ、あとな張純。お前に対する褒美の話をしよう」
ふいに大きく笑うのを止めた郭図はにこりと彼らしくない笑みを浮かべて彼女を見た。
これで私は莫大な富と安定の生活が手に入るんだ。あまりにも上手くいったので少し色を付けてくれるかもしれない。
もしかしたら袁家の重鎮という地位も在り得る。そうなれば、また下らない誇りに人生を費やすバカ共を蹴落とすという最上の蜜を特等席で味わえる。
期待に胸を高鳴らせる張純の目の前で、彼が指を一つ鳴らすと天幕の入り口がさっと開き――――張純は一人の兵にその背を槍で貫かれた。
「ぐ……な、何故……?」
驚愕に目を見開き、どうにか言葉を紡ぐが、
「報酬はこれで勘弁してくれ。あの世っていう安息の時も手に入るし上々だろ? 末路が裏切りってのも、お前らしくていいじゃねぇか」
口を抑え込まれ、次の声を上げる間も無く喉を短剣で引き裂かれ、最後に止めとばかりに心臓に一突き。瞬く間に彼女は息絶えた。
兵に報酬の入った巾着を投げ渡し、後始末を言いつけた郭図は三日月型に口を引き裂いて、動かなくなった張純を少しだけ見下ろしてから無言で天幕を出た。
「バカが。口を割られても面倒だから殺すに決まってんだろ。頸だけは利用価値があるから使ってやる。あと、そうだな……二日後あたりに始めるか。クカカ、公孫賛にとって一番残酷な策で追い詰めてやんよ。張コウよぉ、や
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