白き蓮は折れず
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なる時も全ての民の指標であり続けなければいけない。
ぐっと腹に力を込めて牡丹に寄り掛かっていた身体を直立させ、両頬を己が掌で打ちつけて気合をいれる。
「いったぁ……よし! まだ完全に負けたわけじゃない。救援が来る希望も多々ある。星は疑いのある糧食の始末を、牡丹は兵に……」
他の兵達になんと伝えればいいのか分からず言葉に詰まる。裏切り、と正直に伝えることなど、兵の不安を煽り、士気低下につながるので出来はしない。
「真実を伝えてしまうと兵の士気が下がりますので、料理担当に戒厳令を敷き、他の兵は保存方法を知らないのでネズミが食い散らかしていたのではないかとでも伝えて誤魔化しておきます。第二部隊は一番端の隊舎に隔離、休息を取らせます」
「ありがとう、それで頼む。二人とも急ぎで動いてくれ」
牡丹の咄嗟の機転に感謝しながら伝えると、二人は返事を一つして全速力で駆けだしてくれた。
後に残った私は一人、敵本陣がある方角を一度だけ見やり、
「まだ負けてない。お前達がどんな手を使ってこようとも、私の全てを賭けてこの地を守ってみせる」
昏い声で呟いてから身を翻し、急ぎ足で城壁の上を後にした。
†
先陣の天幕内には今、袁紹軍では無い者が一人いた。
その者の名は張純。公孫賛の所に長く所属し、自身の仮の主を脅かす機会を今か今かと待ち続けていた人物。
美しい外見に下卑た微笑みを携えて、郭図の前で頭を垂れ、跪いている。
「全て滞りなく完了しました。救援報告の使いも道中にて暗殺完了。付近の豪族の懐柔も指示通りに、烏丸も予定数攻め続けて、対応にギリギリの兵力を投入しております」
そう、彼女こそ袁家の放った毒であった。
彼女は黄巾前から公孫賛の治める幽州の地を奪い取ろうとしていた。さらには烏丸との内通者でもあり、幽州の情報漏えいは全て彼女の仕業。
烏丸との内通では、黄巾前の烏丸の頭領を失脚させたい者と画策を行っており、わざと幽州に攻め入らせて世代交代を計らせた。本当はその時点で反旗を翻すはずであったが、劉備義勇軍という邪魔者が力を付けてしまったため予定を遅らせる他無かった。
元々彼女は袁家との繋がりは無かったが、黄巾よりも少しだけ前に郭図と知り合い、共に公孫賛の失脚を念入りに煮詰めて来ていた。
「絶望してる白馬姫の様子が目に浮かぶぜぇ……良くやった張純。これでこの戦の勝ちは確定したも同然だ。あの軍にはもう手はねぇからな。一番最高なのは、幽州の人間の反感もある程度抑えられる事だけどな」
毒の混入について、殺す程のモノを使わなかったのには理由がある。
戦に於いてやっかいな事の一つに負傷兵の管理がある。戦に出る事も出来ず、見捨てる事も出来ず、かといって籠城戦では送り返す事も出来ず、ただただ足を引っ張ってしま
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