十六 内通者
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失ったサスケ。昏睡状態に陥っていたはずの彼が、今は平然と立っている。
おまけに木ノ葉の上忍の中でも随一の実力を誇る写輪眼のカカシが相手となると……。
どう考えても、こちらが圧倒的に不利だ。
一瞬でそういう結論に達したカブトは、匕首を力の限り投げ打った。
バリンと病室の窓が割れる。ガラスの破片がバラバラと飛び散った。
二人の視線がそちらに向いた隙に、カブトは素早く懐から取り出した煙玉を床に叩きつける。
そのまま背後の窓を割り、木ノ葉病院の周囲を囲む木々の中へと彼は墜ちてゆく。
(……一か八かだったけど、やけにあっさり逃がしたな…)
猜疑心を残しながらも、一刻も早く病院から離れようとカブトは走り去った。
逃亡する侵入者の背中を、朦々と立ち込める煙の中で見送る二人。
煙玉のせいで室内に満ちた煙を鬱陶しそうに手で仰ぎながら、一人がコキと首を鳴らす。
「やれやれ。病人の真似も疲れますね」
その言葉に何の反応も示さず、侵入者が病院から遠退いたかどうかを確認するカカシ。カブトの気配が完全に消えたと認めると、彼はすぐさま印を結ぶ。
途端、床で倒れていた暗部達の身体がバシャッと水飛沫をあげた。
暗部の死体があったはずの場所には、ただ水のみが広がっている。
「…チッ、カカシの演技なんて二度と御免だ」
「なかなかお上手でしたよ?」
「うるせえ、黙れ」
いつになく荒々しい口調でサスケに怒鳴るカカシ。不貞腐れた態度で彼は印を結ぶ。
次の瞬間には、床に広がる水上に口を包帯で覆っている男が立っていた。
「こんな水浸しになってたら掃除のおばちゃんが驚くでしょうね」
水分身で作った暗部達の残骸を目にして、サスケがくつくつと笑う。その笑みは、サスケにはとても似合わない朗らかなものだ。見るに見かねて男――再不斬は嫌そうに言い捨てた。
「…いい加減、テメエも術解けよ」
「そうですね。そろそろ本物のカカシさんが騒ぎに気づいて来そうですし…」
ぽんっと軽い破裂音と共に変化を解いた彼が割れた窓を見遣る。廊下からこちらへ向かって来る気配を感じた彼らは、散乱した水とガラスの破片を踏み越え、窓枠に足を掛けた。
カブト同様、病院を囲む木々の中へ消えていく二人。重力に従い墜落していくその身は、直後病室に飛び込んできた畑カカシの目に留まる事は無かった。
木ノ葉病院からある程度遠ざかっても、二人は走る速度を落とさない。木から木へ飛び移りながら、再不斬はふと背後を走る者に声を掛けた。
「…病室の惨状を見たら、逆に警備が厳重にならねえか?」
「大丈夫だと思いますよ?木ノ葉病院の傍には演習場がありまして。よ
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