第七十二話 愛の女神の帯その四
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「しかも好きな人と一緒になりたいっていうのはな」
「いいか」
「恋愛ものはロミオとジュリエットよりもニュルンベルグのマイスタージンガーなんだよ」
やはりハッピーエンドの方がいいというのだ。ただワーグナーの作品で純粋なと言っていいハッピーエンドになるのはこのニュルンベルグのマイスタージンガー位である。
「だからな」
「俺もか」
「適えてくれよ、幸せな」
是非それをだというのだ。
「本当に応援しているからな」
「礼を言う」
親子丼に向ける箸ではなく中田の顔を見ての言葉だ。
「それじゃあな」
「ああ、もうすぐだな」
「俺はこの戦いを降りる」
必ずだ、そうするというのだ。
「生きるにしても死ぬにしてもな」
「どちらにしてもか」
「降りる」
このことは間違いないというのだ。
「戦いに勝って願いを適えるにしても負けて死ぬにしてもな」
「戦うのは怪物だよな」
「剣士ではないことは確かだ」
今残っている十二人の剣士達ではないというのだ。
「若しそれならここまで気が楽じゃない」
「怪物は所詮はイミテーションだからな」
この戦いでの怪物はオリジナルではない、セレネー達がオリジナルの能力をそのまま出しているものに過ぎない。
だからだ、戦うにしてもなのだ。
「気が楽だな、倒すにしても」
「そうだ、それに今更怪物にもな」
そちらを相手にするのはもうだというのだ。
「油断はしないにしても」
「負ける気はしないよな」
「相当な相手でもないとな」
負ける気はしないというのだ。
「だから絶対にだ」
「勝って願いを適えてか」
「戦いを降りる」
こう中田に答える。
「絶対にな。それとだが」
「何だよ、一体」
「あんたが今食っているものだが」
剣士としての話は終えた、それで今話すのはこのことだった。
「海老フライか」
「美味いぜ、かなりな」
「そうだな、どうやらあんたは海老も好きか」
「ああ、揚げ物は大体好きだよ」
その海老フライを食べながら笑顔で答える。
「海老自体もな」
「俺も海老フライは好きだがな」
その海老フライを見ながら話す。
「天麩羅がな」
「ああ、海老天な」
「あれが好きだな」
「あれも美味いよな、うどんやそばの上に置いてもな」
所謂天麩羅うどん、天麩羅そばだ。それもまただというのだ。
「かなりな」
「ああ、美味いな」
「じゃあ今度はそれを食うか」
「戦いが終わってから二人で食べたい」
その海老の天麩羅をだというのだ。
「そしてその相手は」
「俺じゃないか」
「悪いがな」
「ははは、悪くはないさ」
中田は定食のサラダ、かなりの量のキャベツとトマト、それにレタスに白いドレッシングがかけられているものを食べながら話した。
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