Development
第三十四話 黒い雨
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ただろう。それを防いだのはさすがと言える。
が、彼女にとって状況は好転していない。ある意味初手で詰んだとも言える状況だ。
AICは強力な兵器であり一対一では反則に近い威力があるが、その運用には多量の集中力が必要である。また、それ故に自身が注力した対象にしか効果が及ばないため多数相手には不向きである。
つまり、簪が山嵐を全段発射しなかったのは初手でラウラのAICを誘うためのものであり、紫苑が接近した今それを出し惜しみする必要もなくなった。
『追加、いって!』
再び放たれるミサイルの斉射。先ほどの3倍の量が襲いかかる。今回はラウラに加減する必要はないため、それぞれ半数の18発ずつだ。どちらにしろ先ほどの比ではない。
一夏はさらに圧力を増すミサイルに接近の糸口を見いだせず、ラウラはミサイルと紫苑による同時攻撃にAICを完全に封じられていた。苦し紛れに紫苑に向けて発動されるAICも、彼はラウラの視線や手の動きから察知して躱し続けた。
紫苑自身もミサイルの雨に晒されながら接近戦が行えるのは、簪の打鉄弐式に追加した機能によるものだった。楯無が賞賛する彼女の演算能力を活かすために解析能力の強化と、その解析結果を特定の相手にコア・ネットワークを通してほぼノータイムで共有する機能を付与した。
その効果により、簪の放ったミサイルの軌道は紫苑のハイパーセンサーに予測ルート付きで認識されている。故に、被弾することなく思い切りミサイルの群れに突っ込むことができるのだ。
(くっ、いくら奴があの魔女だったとして、ミサイルの援護があるとはいえこうも一方的に追い込まれるとは……)
ラウラは少なからず自分の力に自信があった。たとえ、相手がかつて自分の部隊を半壊させた相手だったとしても、あれから自分が続けた訓練と与えられた最新鋭機の力を合わせれば何も問題ないと思っていた。
国内にはほとんど敵はいなかったし、このシュヴァルツェア・レーゲンがあれば国家代表にすら勝てると信じていた。
(これではあの頃と同じではないか……違う! 私は生まれ変わったのだ。私は、私はもう……)
『出来損ないなどではない!』
今までのラウラからは想像もつかない、助けを求めるような悲痛な叫びが木霊する。
彼女はワイヤーブレードを展開させ、複数のミサイルを同時に落としつつ紫苑を牽制するが逆にいくつかのワイヤーブレードを切り落される。そしてそのまま自身が天叢雲剣に斬られ、その勢いで地面に叩きつけられた。
『ぐっ、あああぁぁ!』
その一撃で大幅にシールドエネルギーを削られる……が、これで終わりではない。今までかろうじて躱し続けていたミサイルがこの隙に一気に襲いかかる。強烈な一撃を受けて体制を崩しているラウラにこれは不可避だった
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ