夜見島と怪異
絶望の始まり
須田恭也 10年前 『消失』 羽生蛇村
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子《やぐらいちこ》」
少女は市子という名らしい。
その言葉を聞いて恭也はとりあえず一安心する。
少し屍人ではないかと疑ってはいたが、どうやら違う様でほっと胸を撫で下ろす。
「俺は須田恭也。恭也って呼んでくれていいよ」
「きょう……や……?」
「そう!」
手を出し、握手を促した恭也。
市子も少しは安心したのか、恭也の握手に応じ手を握った。
「さて……と。ここはどこだー」
恭也は市子の手を握りながら周囲を見渡した。
ボロい木造の建物と、広いようで狭い広場を見る限り学校だと悟る。
「学校……ってわかってもねぇー。少し周囲を見て回るか」
そう言って市子の手を引っ張って突然歩き出した。
思わぬ行動に市子は当然の様に驚き、引っ張り返す。
市子がなったように、恭也も後ろによろめいた。
「びっくりした、どうしたの?」
「手……握りっぱなし」
「あ、嫌だった?危険だと思ったから一緒に連れて行った方が安全かと思って……」
かつて美耶子とそうしたように、彼女を守りたかった。
美耶子の様にさせたくない、もう二度と人が死ぬのは見たくない。
ただそんな一心で手をつないでいた。
美耶子は各地に散らばる異界を繋いで、恭也をここまで飛ばした。
それならここも異界であり、同時に不浄の者・屍人だってここにいるはずだ。
ならなおさらここに人間が居るのは危ない。
「行こう、ここは危ない」
その言葉に、市子は握っていた手を握り返した。
恭也の気持ちを悟ってくれたのか、それとも単純に怖かったのか。
どちらでもよかった。
今はとにかく周囲を探索するしかなかった。
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