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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二話 没落の始まり
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「卿らには言っておく、他言は無用だぞ。政府は同盟と和平を結ぶつもりだ」
リューネブルクと顔を見合わせた。そしてオフレッサーに視線を向けるとオフレッサーが頷いた。
「軍は政府の方針に従う、帝国軍三長官の決定事項だ」
「しかし、貴族達が出征しますが?」
小声でリューネブルクが問い掛けるとオフレッサーが微かに笑みを浮かべた。
「あの連中を同盟の手を使って始末する」
またリューネブルクと顔を見合わせた。リューネブルクの顔には驚愕が浮かんでいる、おそらくは俺も同様だろう。
「だから武勲を上げれば皇女殿下方の婿にすると?」
俺も小声になっていた。
「そういう事だ、ミューゼル。大物を釣るにはそれなりに餌も良い物を使わんとな。ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も本気で連中を始末するつもりだ。改革、和平、どちらを行うにしても連中は邪魔だと判断された」
非情な話だ、これまで帝国の藩屏として存在した貴族達が今では邪魔だと判断され始末されようとしている。そして貴族達はその事に気付いていない。何時の間にか時代が動いていた、そしてその動きに貴族達は適合出来なかった、そういう事なのだろう。
「しかし和平と仰いますが反乱軍、いえ同盟はどう考えているのです? 帝国だけでは和平は不可能ですが……」
俺が問い掛けるとオフレッサーがニヤリと笑った。悪相が酷い、子供なら泣き出すかひきつけを起こすだろう。
「あちらにも帝国との和平を願う勢力が有る。まだ政権を担当しているわけではないがその力は決して弱くは無いようだ。今なら彼らとの間に和平を結ぶことが可能、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯はそう考えた様だな」
「……」
しかし政権を担当していないという事は確実な話ではないようにも思えるが……。
「貴族達の出兵もあちらには伝えてある。和平の邪魔だという事で意見が一致した。出兵先をフェザーンにというのは向こうからの要求だ。同盟政府ではないぞ、和平派からの要求だ」
驚いた、俺だけではない、リューネブルクも驚いている、今日は驚かされてばかりだ。和平を結ぶ、そのために帝国政府と反乱軍の一部勢力が協力している。しかもその協力は密接と言って良いだろう。何時の間に……。
「ヴァレンシュタインは和平派の主要メンバーだ」
「まさか……」
俺が声を出すとオフレッサーが”事実だ”と言った。あの男が和平派? 確かに帝国と反乱軍が戦い辛い状況を作り出しているが……。
「あの男、これを機に貴族連合を利用してフェザーンを叩き潰すつもりだ。地球教の根拠地を放置しないという事だろう」
「なるほど」
リューネブルクが頷いた。俺もなるほどと思った。帝国は反乱軍を利用して貴族連合を潰す。反乱軍、いやあの男は貴族連合を利用してフェザーンを潰す……。貴族連合も地球
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