第百四十九話 森の奮戦その十三
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「その者が一人も灰色ではない」
「これも妙ですな」
「まことに本願寺でしょうか」
「それも気になりますな」
「雇われたのかのう」
長政はそうした刀や槍で迫る門徒達を倒しながら応える。
「若しや」
「一向宗にですか」
「銭で雇われたと」
「そうした者もいるであろう」
こうも考える長政だった。
「だからのう」
「ううむ、本願寺の財力ならありますな」
「あの寺は銭もかなり貯めておりますし」
「それなら、ですな」
「当家との戦に」
「うむ、少なくともこの者達は百姓に思えぬ」
武器が百姓のそれであるだけでなく妙に手慣れている、しかも動きもかなりいいものだからである。
それでだ、長政は言うのだ。
「強さは六角の兵よりも強いか」
「ですな、どうやら」
「三好の兵よりも」
「うむ、強い」
言葉には出さないが織田の兵達よりもだ、やはり織田家の兵達は弱兵だ。
「これはな」
「これでは与三殿も苦戦しておりますな」
「今ここに来てよかったですな」
「若し少しでも遅れていれば」
「城は今日にでも陥ちていた」
そうなっていたであろうというのだ。
「危ういところだったな」
「ですな、今も城はかなり囲まれています」
「このまま押し潰されていたでしょう」
「では今日ここに来なければ城は」
やはり陥ちていた、そうなっていたというのだ。
このことを確かめてだ、長政は前から来る青い軍勢の旗を見て言った。
「与三殿が来られるぞ」
「では一刻も早く」
合流しようとだ、家臣の一人が言ってだ。
長政も実際に前に出る、そして命じた。
「行くぞ」
「では」
紺色の者達も応えた、そしてだった。
浅井の軍勢は進む強さを強めた、それを見て森も言う。
「よし、猿夜叉殿が来られるぞ」
「はい、間違いなくあの方です」
「あの果敢な采配は猿夜叉殿です」
長政は采配でわかる程だ、常に先頭に立ち果敢に戦うその戦ぶりは彼ならではのものであるからだ。敵としても味方としても見てきているからわかるのだ。
それを見てだ、彼等も言うのだった。
「よく来てくれました」
「これで猿夜叉殿と合流出来れば」
「我等も」
「うむ、六千じゃ」
三千の兵が加わってだ、兵の数が倍になるというのだ。
「幸い兵糧もあるしな」
「ではですな」
「ここは」
「合流するぞ」
何としてもだとだ、森は言った。
そしてだ、そのうえでだった。
織田の兵達も果敢に進み敵を倒していった、そのうえで。
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