第五十二話 商業科の屋上その五
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「愛実ちゃんもそう思うでしょ」
「それはね」
よくおかん気質と言われている愛実だ、徹夜なぞとなるのは当然だった。それで今もこう聖花に対して言うのだった。
「やっぱり」
「そうでしょ、徹夜なんかしたら」
「身体に悪いからね」
「ちょっとでも寝ないとね」
「手塚治虫さんもよね」
愛実はこの偉大な漫画家のことについても言及した。
「確か」
「あの人平均睡眠時間が四時間で」
普段から寝ていなかった、手塚治虫は激務家だったことでも有名だ。
「しかもね」
「尚且つよね」
「そう、徹夜も多かったそうだから」
「しかも徹夜の後でよね」
「すぐにまたお仕事よ」
「それ駄目よ」
愛実は口をへの字にさせて言い切った。
「死ぬわよ」
「手塚先生は過労死とも言われてるわね」
「石ノ森先生もよね」
「三日ずっと徹夜とかもされてたらしいから」
「そんなの絶対に駄目よ」
愛実は口をへの字にさせたまま答える。
「藤子不二雄先生もだったのかしら」
「F先生も若死にだったから」
今では六十やそうした年齢ではそう言われる様だ、この人達にずっと描いて欲しかったという人からしてみれば夭折と言えるだろう。
「だからね」
「徹夜は後でくるのよね」
「しかも徹夜の間ずっと煙草吸ってると」
「絶対駄目ね」
「そうよね」
「煙草は駄目よ」
愛実は煙草についても駄目出しをした。
「あれは身体にいいことは何もないから」
「そうそう、だから私も煙草はね」
「高校生だしね」
「大人になってもね」
「絶対によくないから」
身体に百害あっても一利なしである、まさにそれは。
「毒だから」
「そうそう、一本吸うだけで寿命にくるって言われる位だから」
「徹夜でしかも煙草すぱすぱしてたら」
「身体に悪いわよ」
もうこれは絶対にというのだ。
「若死にしてもね」
「不思議じゃないわね」
「そうよね」
二人は健康志向だ、この辺りも食べ物を扱っている家の娘達らしい。そうした話をしながらかるたをしてだった。
聖花は眼鏡に手を当てながらこう言った。
「それでね」
「それでって?」
「目にいい色って緑とか青よね」
「そうよ、よく言われるわよね」
「特に緑よね」
「それがどうかしたの?」
「黒と黄色は悪いわよね」
あのチームの色だ、最早言うまでもない。
「そうよね」
「ちかちかするからね」
「危険を表す色だから」
「そう、一番目立つ色の組み合わせでね」
そしてなのだ。
「それだけにね」
「ちかちかとするから」
「目によくないわね」
「けれどね、阪神の色だからね」
「そうそう、どうしても見るのよね」
二人共関西にいる、しかも阪神ファンだ。それでどうしても目に入ってしまうのだ。
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