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八条学園怪異譚
第五十二話 商業科の屋上その四

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「まだ怖くないわよね」
「そうね、それじゃあ」
「ええ、じゃあね」
 こう話してそしてだった、愛実はかるたを一枚取ってから行った。
「まずはね」
「うちの校舎の屋上ね」
「そう、それでね」
「次はそこね」
「標本室の中にも誰かがいて」
「泉もあるから」
「そこにも行こう」
 次はというのだ。
「そういうことでね」
「わかったわ、それじゃあね」
 聖花は標本室については暗い顔のままだった、だが。
 そのうえでだ、こうも言った。
「けれどもうね」
「今まで色々見てきたからね」
「そう、慣れてるでしょ」
「ええ、夜もね」
「朝が辛いけれどね」
 ここで愛実は怪談場所、泉の候補地を見に行った後の朝のことも話した。
「行った後は」
「そうね、どうしてもね」
「聖花ちゃんは特によね」
「私の家パン屋さんだからね」
 朝早く起きてパンを焼かないとならない、それでなのだ。
「けれど少しでも寝てるから」
「徹夜はしてないのね」
「徹夜はしない主義だから」
「やっぱりその後にくるから?」
「徹夜はよくないのよ」 
 その身体にだ、非常にだというのだ。
「少しでも寝た方がいいから」
「聖花ちゃん目を閉じたらすぐに寝られるしね」
「それですぐに起きられるから」
 寝起きが極めていいのだ、聖花はそうした体質なのだ。
「だからね」
「いい体質よね」
「私もね」
 愛実もだとだ、ここで言うのだった。
「そうだしね」
「愛実ちゃんも寝つきいいわよね」
「それですぐに起きられるのよ」
「だから二人共よね」
「そう、だからね」
「徹夜しないで済む体質ならね」
「寝るに越したことがないから」
 聖花は愛実に確かな顔で話す。
「寝られる時は寝るの」
「それが身体にいいからね」
「愛実ちゃんもそれなりに寝てるでしょ」
「うん、休み時間でもね」
 聖花と一緒にいない時はそうしているというのだ。
「後はね、お昼も」
「寝ないと」
 少しでもだというのだ。
「身体に悪いから」
「漫画家さんで徹夜する人って結構いるわね」
「あれ絶対に駄目だから」
 漫画家の徹夜はとりわけ、というのだ。
「トキワ荘の人達とか凄い徹夜してたっていうけれどね」
「石ノ森章太郎先生よね」
「そう、あの人は三日連続で徹夜とかされてたらしいけれど」
「六十代でね」
 今の日本の平均寿命よりも短い、若死にと言えるだろう。
「若い頃の無理が関係してたと思うわ」
「じゃあ本当に徹夜jは」
「しないに限るわ」
 聖花はそこは絶対にと言う。
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