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『八神はやて』は舞い降りた
第1章 悪魔のような聖女のような悪魔
第14話 聖女のような悪魔
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りがとうございます。わたし気を失って、何も覚えていなくて。みなさんに助けていただいた上さらに御厄介になってしまって――」


 目の前で、アーシア・アルジェントが照れつつお礼を述べている。
 彼女は、原作通りリアス・グレモリーの転生悪魔になった。
 駒はもちろん「僧侶(ビショップ)」である。


 ――――アーシア・アルジェントの転生悪魔化を薦めたのは、ボクだ


 一命を取り留めたとはいえ、まだ危険な状態(という設定)だったし――原作でも、神器を抜かれ死ぬ寸前だった彼女は転生悪魔となっている。
 とはいえ、原作知識云々を置いておいても、現実的な選択肢ではあった。
 グレモリー眷属が情に厚いことは、実際に付き合いのあるボクは重々承知している。
 さらに、リアス・グレモリーは、現在の魔王の妹であり、迂闊に手出しはできない。
 頼る先しては破格だろう。


「よろしいのですか、マスター。遠くから見守らずとも、もっと近寄って会話に混ざってもよろしいのではありませんか?」

「いや、これでいいんだよ。まずは、同じグレモリー眷属と仲良くなったほうがいいだろう?」

「マスターがそのように仰るのならば、とりあえず納得することにします」

「『とりあえず』なのかい―――」


 苦笑とともに言葉が漏れる。
 うまくごまかしていたつもりだったが、リインフォースにはお見通しだったみたいだ。
 記憶にあるここ数日一緒に遊んだ「アーシア」の姿と、目の前で照れくさそうに微笑む「アーシア・アルジェント」の姿が、重ならないのだ。
 苦難から解放されたアーシア・アルジェントが明るさを取り戻したせい、とも思ったが――


「―――ええ。『とりあえず』です。話せるときがきたらでいいですから、話してください。『家族に隠し事はダメ』と教えてくれたのは、誰だと思いますか」

「リインフォースには敵わないなあ――うん。まだ、ボクも明確にはわからないんだ。転生悪魔化を薦めたのはボクだ。いまでも、この選択は正しいと思う」

「何か問題があるということですか?」

「いや、問題と言うかボク個人のことなんだ。嬉しそうなアーシアには悪いけれど、素直に喜べない自分がいてね。ボクも、なぜこんな気持ちになるのか、全く分からないんだよ」


 ――そう。本当にわからないのだ。
 アーシア・アルジェントが悪魔化することに不利益はない。
 彼女は救われ、リアス・グレモリーは戦力を手に入れ、ボクは原作知識を活用できる。
 それなに、どこか納得できない自分がいる。
 理屈では分かるが、湧き上がる感情はどうにもできない。


「……そうです、か」


 どうも考え事に夢中だったせいか、リインフォースの心配そうな眼差しに気づく
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