第一章
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第一章
危険なラブモーション
今日もあの娘は踊ってる。パーティーの主役だ。
「いいねえ」
「全くだよ」
パーティーに来ている連中は皆彼女を見ている。何を隠そう俺もだ。
そんな俺に仲間達が笑いながら声をかけてきた。どうも安物のドラマみたいな展開だ。
「なあ」
「それで今回はどうだったんだ?」
「いけたか?」
適当に作ったカクテルやビールの入ったコップを片手に声をかけてきた。俺は決めたつもりの格好でキザに立っていたがそこで連中の言葉に顔を向けた。
「いけたって何がだよ」
「だから今度の告白だよ」
「あの娘にな」
からかうような笑みをそのままに俺に尋ねてくる。そして俺はそれに応えるってわけだ。これも何か決まった展開だった。本当に安いドラマだ。
「昨日告白したんだろう?」
「どうだったんだ?」
「何で俺が今ここにいると思うんだ?」
俺は無表情にしてみせてこう返してやった。
「何でだと思うんだ?」
「言うまでもないってことかよ」
「そういうことか」
「そうさ、振られたよ」
言いながらだった。彼女を見る。一人でダンスを踊っているがこれがまた。やけに短いスカートをひらひらさせて身体を煽情的に動かしている。その大きな胸がやけに目立つ。
そして胸も揺れている。そこで。
「おいおい」
「弾けたぜ」
「また今日はとりわけ凄いな」
男連中はここで思わず声をあげた。何と服の胸のボタンが一つ弾け飛んだのだ。胸があまりに大きく揺れ動いたからだ。
「ボタンまで飛ばしたのかよ」
「すげえこったな」
「あの胸だよ」
俺はそんな彼女を見ながらまた言った。
「あの胸にまずやられたんだよ」
「女はまず胸から」
「そういうことかよ」
「そうさ」
仲間達に応えながらここで右手に持っていたカクテルを飲む。ブラッディマリーだ。トマトの味がやけに強くて酒はあまり入ってなかった。
けれどそのブラッディマリーを飲むとだった。俺はこう言わずにいられなかった。
「その次にはな」
「次には?」
「目だったな」
俺が彼女を次に見たのはそこだった。
「あの目なんだよ」
「目かよ」
「そうさ、目さ」
言いながら踊り続ける彼女の目を見る。切れ長で睫毛が長く少し垂れている。黒い目が何故か紅くも見える。そんな不思議な目だった。
「似てないか?」
「似てるって?」
「何だ?」
「これだよ」
仲間達に応えながらまたブラッディマリーを手に取った。そうして飲んでみせたのだった。
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