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第三十二話 共犯者
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「う……」
ゴーレムからの襲撃騒動が収まって数時間後、一夏は全身の痛みに追い立てられて目を覚ました。意識がぼんやりと覚醒するなかで周囲を見渡すと、どうやら自分はベッドの上にいるのだと気付いた。
ベッドの周りはカーテンで仕切られていて、その隙間から僅かに見える棚には薬品なども並んでおり、それを見てここは保健室であると理解する。
何故自分が保健室にいるのかと考えた時に、ようやく自分が未知の相手と先ほどまで戦闘していたことに思い至り、ベッドから飛び出そうとするも再び襲い来る痛みによってそれは阻まれた。
「全く、だから無茶をするなと言った」
確認もなく無造作にカーテンが開け放たれる。
その乱暴な言動にも関わらず、その声を聞いた一夏はそれが誰かを確認するまでもなく僅かに安堵する。そしてすぐに思い出す、先ほどまでの戦いを。
「あいつは……どうなったんだ? 千冬姉……箒は!?」
普段は学内でそう呼ばれることを良しとしない千冬だが、この時ばかりは特に注意するでもなく状況の説明を始めた。
「襲撃者は全て撃墜した。篠ノ之は無事だ……とは言い難いな」
「なんだって!?」
箒について言葉を濁す千冬に、一夏は最悪の事態を想定してしまう。思わず声を荒げるが、やはり痛みが全身を駆け巡り蹲る。
「ずっと説教していたからな、ぐったりしているよ。あの軽率な行動に対して学園としては処分なしの通達が出ているが、考えなしな行動がどんな結果を招くか理解させねばなるまい? 今は反省文を書かせているよ、そのあとまた説教だ」
先走った想像をしていた一夏は今の千冬の言葉を理解するまでに僅かに時間を要したが、やがてその意味するところに気付くと、先ほどまでの真っ青で悲痛な表情は赤みを帯びて拗ねたような表情へと変化する。
「ち、千冬姉! そんな……いてて。ひどいや、体中痛いってのに」
「ふふ、無茶をするからだぞ。そもそも、その痛みの原因のほとんどは限界を超えた挙動に対する副作用のようなものだ。加えて……絶対防御までカットしたな? 砲撃を受けたときに完全に動作していなかったようだ。よく……無事だったな」
「千冬姉……」
一夏は自分があの時に何をしたのか、絶対防御のカットとは何か、など解らないことだらけだったが、最後の言葉で千冬が自分のことを心配してくれていたであろうことだけは伝わった。
「心配かけてごめん」
その言葉に、一瞬驚いたような様子の千冬だがすぐにいつもの表情に戻る。僅かな笑みを残しながら。
「そう思うのなら無茶はするな。私の弟だから、そう簡単に死なないのは知っているがな」
そう言った千冬の表情は、確かに姉のものだった。
「失礼します……」
と、そのとき保健室の扉が開く
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