子どもより優先する用事はありません。
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「さて、明後日から夏休みに入るけど、まだ一日あるからな。 最終日に体調不良で休むことの無いよう、夜更かししないで早く寝るんだぞ。 最後までしっかり学校にくるように! それじゃあこれで先生の話は終わりだ」
「起立!」
終わりと言ってすぐに学級委員が号令をかける。
学級委員の結城(ゆうき)のリーダーシップは素晴らしい。
そのお陰もあって私語をする生徒は一人も居らず、静かに次の号令を待っている。
「気をつけ。 礼!」
「「さよーならー!」」
子ども達の挨拶に笑顔で挨拶を返す。
「さようなら」
さぁ、帰りの会終了!
今日は待ちに待った木曜日だ。
機嫌よく職員室へ向かいながら腕時計を確認する。
香坂美鶴先生が来るまであと15分後か。
仕事の関係で遅れるかもしれないらしいし、十分ゆとりをもって迎えられるな。
「しっ椎名先生……!」
にまにま気持ち悪い顔でニヤついていると、後ろから呼び止められた。
慌てて振り返れば、うちのクラスの生徒、福田直樹が何か思い悩んだ顔で佇んでいる。
「あの……相談したいことが、あるんです」
○ ● ○
相談室の鍵を開けて福田を招き入れる。
相談室は子ども達の動線と離れたところにあり、静かだ。
やや緊張した様子の福田に微笑みかけ、椅子に座るよう促した。
香坂美鶴先生には申し訳無いが、子どもが優先だ。
一応、もし俺が間に合わなかった時のために山口先生に対応をお願いしているから大丈夫だと思うが……。
それにしても、一体何の相談だろう。 福田はおっとりした性格の真面目な子で問題を起こすタイプでは無い。 勉強は苦手だが、勉強の相談なら相談室を使うことは無いだろう。
「あの……もしかしてこの後用事ありましたか?」
「いや、大丈夫だよ。 それに生徒より優先する用事なんか無いからそんなことは気にしなくて良い」
そう言うと福田の頬が少し緩んだ。
もしかしたら、山口先生に香坂美鶴先生の対応頼んだのが聞こえてたかもしれないな。
「それで、何かあったのか?」
「ええと、何かあったという程の事じゃないんですけど……」
福田は少し視線を泳がせた後、ごくりと喉を動かし決意したように重い口を開いた。
「……イジメられ、そうなんです」
「イジメられそう?」
「あの、僕、勉強駄目で……先生の教科もテストの点数低くて……すみません、頑張ったんですけど……」
「何言ってるんだ。 中間より18点も伸びたじゃないか。 凄く頑張ったんだろうなって思ったよ」
「……っありがとうございます」
初めて福田が小さな笑顔を見せた。
しかし、すぐに暗くなる。
「でも、クラスの足ひっぱっち
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