子どもより優先する用事はありません。
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きこそ物の上手なれって奴です」
「……なるほど」
「香坂先生は――」
「美鶴」
「は?」
「美鶴で良いですよ。 香坂先生じゃ父と被るでしょう」
「え、いやしかし……」
「囲碁仲間からも下の名前で呼ばれますから、その方が落ち着くんです。 ……駄目、ですか?」
グハッ! 何だその寂しげな表情は! そんなのは可愛い女の子にやれ!
男にやっても効果ないからな! べ、別に何とも思わないんだからな!
「そ、そういうことなら、美鶴先生と呼ばせていただきますね」
「ありがとうございます」
香坂美鶴先生改め美鶴先生はフッと満足そうに笑った。
クッ……負けた。
因みに、俺が内心『香坂美鶴先生』とフルネームで呼んでいたのは、彼の言うとおり香坂先生だと憧れの『香坂砕臥先生』と被るからだ。
俺の中の香坂先生は香坂砕臥先生ただお一人だぜ。
しかし、美鶴先生と呼ぶとどうしてもアイツを思い出してしまうな。
ネットの友人を思い出しふと笑みを浮かべる。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。 ただの思い出し笑いです。 実は私の友人にもミツルという奴がいて……あ、関係無い話でしたね」
「いや……そのミツルさんはどんな人なんですか?」
「……ええと、まぁ、ネットの囲碁友だちなんです。 中々強いんですよ。 自称プロですから。 尤も美鶴先生とは比べ物にならないでしょうけど――あれ? 先生? どうしました?」
急に足を止めた美鶴先生を振り返る。
「――椎名先生」
「はい?」
「良かったら、後日個人的に対局しませんか?」
「えっ! それは願ったり叶ったりですけれど、良いんですか?」
「ええ、今日はこの後もお仕事忙しいでしょうから。 土曜日なんかどうですか?」
「喜んで!」
子ども達の前で負けるの嫌だなーと思ってたからありがたい!
何で急にそういう話になったのか謎だけど……まあ、タイトルホルダーとやれるんだから細かいことは良いか!
「約束ですよ」
――そう言って笑った美鶴先生の目が獲物を見据える猛禽類の様な目に見えたのもきっと気のせいだ。
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