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碁神
子どもより優先する用事はありません。
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ゃって……」
「うん?」
「えっと、椎名先生のクラスだから、国語のテストだけはクラス平均で学年トップ狙おうって話になってたんです。 でも、僕のせいで平均点下がっちゃって、トップになれなかったから」
「そんな話になってたのか――」

何とも教師冥利に尽きる話だ。
思わず緩みそうになった頬を引締める。 危ない危ない。
嬉しそうな顔したら、余計罪悪感持っちゃうかもしれないからな。

「それで、松浦君が『俺は他の教科全部捨てて頑張ったのにもうちょっと頑張れよな』って。 あの、それは冗談っぽく笑いながらなんですけど。 でも……結城君が……『福田はお前と違って国語以外捨てるとか出来ないんだよ。 おりこうさんだからな』って……」
「あー……松浦と結城がなぁ」

松浦(まつうら)春杜(はると)は勉強こそあまりやる気が無いもののスポーツ万能容姿端麗でクラスの人気者だ。
あまり物事を深く考えないサッパリした奴だから、多分悪意は無かっただろう。
結城(ゆうき)主人公(ひーろー)は名前に触れた奴を叩きのめすということ以外は完璧な優等生で、勉強の成績は常に学年トップの秀才。 我がクラスの学級委員だ。
強いカリスマ性を持っていて、俺をからかう生徒も結城が一言注意するだけでぴたりと口を閉ざす。
合わない様で親友同士の二人だ。

学年トップの奴が『おりこうさん』とか完全に嫌味だろう。
結城に嫌味を言われたら、結城が何もしなくても周りが何かしそうだな。

「それから、他のクラスメイトにもそのことでからかわれるようになって。 まだイジメという程のことはされて無いし、ネタにしてるって感じなんですけど」
「なるほど。 福田はそれをどうしたいんだ?」
「……えと、今くらいのままなら別に良いんです。 ――僕が勉強できないのが悪いんですから……。 でも、これからエスカレートしたらって思うと怖くて……結城君に、睨まれたら、絶対っ……グスッ……これからの学校生活が……ズズッ……」

涙が零れ俯いた福田に黙ってティッシュを渡す。
……要するに、結城が怖くて相談してきたわけか。

「すみませ――」
「あのな、まず一つ」

顔を上げた福田君の目を見てゆっくりと話す。

「勉強が出来ないことは悪いことじゃない」
「え……」
「社会に出て中学で習うことの大半は役に立たん。 ペリーが来航した年なんか覚えてたって何か役に立つと思うか? 二次方程式だって、使うのは限られた職の奴だけだろう。 俺の教科だって、漢字なんか書けなくても読めさえすれば辞書があるし今はパソコンだってある。 テストに出しといて何だけど、セリヌンティウスが何故メロスの身代わりになったかなんて、知るか、セリヌンティウスの勝手だろって感じだよな?」
「……教師が
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