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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第47話 「できる事と、やりたい事と、やるべき事」
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書けない者もいるのだ。それではいかん。いけないのだ。
 改革のためなら、老親も泣かす〜。それがどうした。文句があるか〜。
 領内から集めた教師達も、平民達だ。
 どいつもこいつも希望に溢れている。

「為せばなる。為せねばならぬ。何事も!!」
「ヨハン様はお変わりになられた。あの上品だったお方が、もの凄く、ものすごーく、口調が悪くなってしまわれた」
「ええい、うるせえっ」

 声を張り上げている私の背後で、使用人たちがこそこそ囁いていた。
 ここは壇上じゃ。がたがた抜かすな。
 それより見ろ、農奴の子らを。これから学校に通えるのだ。希望とやる気に満ちているじゃないか。素晴らしい事だろう。
 クロプシュトックこそ、学問の最高府にしてみせる。

 ■ノイエ・サンスーシ フリードリヒ四世■

「後一本、持ってくるのだ」
「いけません。ワインは一日に二本までとの、皇太子殿下のお言いつけです」
「予は皇帝だぞ」
「皇太子殿下のお言いつけです」

 うぬぬ。宮廷の女官達が口をそろえて、予に酒を飲ませないようにしてくる。
 おのれー。ルードヴィヒめ。
 父の楽しみを奪うつもりかっ!!
 なんという、かわいげのない奴じゃ。
 しかし女官達のドヤ顔がむかつくわ。奴に文句を言ってやらねば。
 急いで連絡するのじゃ。

「というわけで、なんとかするのじゃ」
「やなこった。それより仕事しろ。老人でもできる仕事を用意してやる」
「予は皇帝じゃぞ!!」
「俺は皇太子だ。あんま楽ばっかしてると、すぐに惚けるぞ。よいよいになりたくないだろう?」
「うぬぬぬ。がぁ〜っでむ」
「やかましい!! 泣くな騒ぐな。薔薇園燃やすぞ」
「予は銀河で一番、不幸な皇帝じゃ〜」
「けっ、銀河に皇帝は一人だけだろう。やはり、惚けたな。リハビリがてらに仕事しろ」

 父親をこき使おうとは、なんというひどい息子だ。
 予は悲しいぞ。
 画面の前で泣き崩れても、奴はしらっとした顔をしておる。

「忙しいんで、切るぞ」
「ちょっと待つのじゃ」

 真っ黒になった画面を前に、呆然と立ち竦む予であった。

「ひどい。ひどすぎるぞ。ルードヴィヒめ〜」

 皇帝に対する敬意など微塵もない。
 育て方を間違えたわ……。
 人生というのは、不条理なものよな。
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