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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第47話 「できる事と、やりたい事と、やるべき事」
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が終わるのじゃ。
 これは一大転機となろう。
 だからこそ、皇太子殿下には帝都にあって、戦場になど出て欲しくない。

「いま、あのお方を失うわけには行きませんからな」
「無論じゃ」

 いま、皇太子殿下を狙う者がいたら、そやつは帝国を敵に回すであろう。
 それも貴族だけでなく、平民達すら敵に回す事になる。
 叛徒どもはそれを理解しておるのじゃろうか?

 ■同盟作戦本部 ラザール・ロボス■

 部屋に入ると幕僚達が席に座っていた。
 その中に一際顔色の悪い奴がいる。
 アンドリュー・フォーク。士官学校を首席で卒業した中佐だ。
 わたしが席に着くと、いきなり意見を述べだす。
 あいもかわらず、夢見るような意見だ。中身がない。これが士官学校の首席とは、同盟の人材も枯渇し始めているな。

「フォーク君。はっきりと言っておくが、今回はすでに負けている。後はいかに負けを少なくするかが、肝要だ」
「閣下。戦う前から負けたと口に為されるのは、如何なものかと」
「だが現実だ。厳しいが現実なのだ。それを分かった上で、作戦を考えなければならない」
「少官はそうは思いません」

 現実が見えていないのか?
 思わずため息が出そうになった。
 目頭を指で揉みつつ、もう一度繰り返す。

「今回は負けだ。戦略的に敗北した。それをまず理解して欲しい。それからフォーク君、君は自分を特別視したがるが、現実はそう甘くない。人間は誰しも、できる事とやりたい事とやるべき事は一致していないものだ」
「できる事とやりたい事とやるべき事ですか?」

 青筋を立てて勢い込んでいたフォーク君が、一瞬呆気に取られた表情をする。

「そうだ。例えば君は、前線指揮官としては向いていない。参謀としても並みだろう。しかし後方担当、軍官僚としては優れている。君が目指すべき対象はアレックス・キャゼルヌ君だな。覚悟を決めて後方担当として邁進すれば、彼に勝る逸材になるとわたしは確信している」
「しかし小官は……」
「参謀として帝国に、いや、あの皇太子に勝ちたいのだろう。しかし君の特性は軍官僚だ。だからこそ、できる事とやりたい事とやるべき事は一致していないのだ。それはあの皇太子も同じだろう。これを見たまえ」

 そう言って皇太子のファイルをフォーク君の下へ、差し出した。
 そこには皇太子の経歴が、かなり詳しく書かれている。
 それを読んだときの衝撃を、彼にも分かってもらいたいものだ。
 あの皇太子。平民であれば、優秀な参謀になっただろう。門閥貴族ならば、宇宙艦隊司令長官かもしれない。ザクのパイロットとしても優秀だ。しかし戦場には立てない。
 武勲を立てる場所を得る事はない。
 武官として、どれほど優秀だったとしても、武勲を立てる場所を得られない
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