暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第3部:学祭2日目
第11話『猛撃』
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日は、俺が面倒見てあげるから。
安心しなよ」
 誠はふいと思いついて、
「たぶん親父は、榊野で唯ちゃんを待ってると思うんだ。少なくとも今日1日は、行かないほうが身のためだよ」
説得を試みたが、
「ううん……、」唯は首を振って、「私、マコちゃんと本当の恋人になりたいから……。学祭の中で、きずなを深めたいの……」
 何かを探るように、手をもぞもぞとスカートのポケットに入れている。
 誠は、歩きながらじっと考えて……。
 言葉に、メールを送った。


「あれ、唯―!」
「おねーちゃん、どこにいるのー??」
 本来なら家族みんなで、食事にありついている平沢家。
 だが今回は、そうはいかなかった。
 唯がいなかったからである。

「どこいったのかしら……。憂、わかる?」
 憂の母が、彼女に問う。
「どこ、か……そうだ」
 憂が思いついた時、
 ピーンポーン。
 玄関の呼び鈴。
 憂はだれよりも早く動き、応対した。

「はい、平沢です」
『おや、唯ちゃんはいるかな』
 憂は呼び鈴の声で、背筋が凍ってしまった。
 沢越止の声。
「……お姉ちゃんは、外出してます……たとえいても、貴方には渡しません」
 唸るような憂の声。止も不快になり、
「俺は狙った獲物は逃がさないたちでさあ。後悔しても知らないぞ」
 すぐに切ってしまった。
「誰から?」
 聞いてくる母に対して、憂は、
「何でもない」
 とだけ、答えた。


 1人で唯の家まで来ていた律は、家のドアの前にいる男を見て、息をのんだ。
 肩までかかる長髪、筋骨隆々。
 どす黒く濁った眼が、そちらをむく。
 まぎれもない、沢越止。

「……何の用だ。わざわざ唯のところまで来て」
 気がつくと、律の声が一オクターブ低くなっている。
「何って、唯ちゃんに会いに来たのさ」
 止の声は、悪びれていない。

「待ちなさい!!」
ドアから憂が、あわてて出てくる。
「お姉ちゃんがどこにいるのか、大体の察しはつくけど……貴方には教えない」
「おいおいおい……いいのかなあ、そんなこと言って。ま、君も可愛いから代わりにはなるだろうけど」
 絡んできた止の手を、憂は払いのけ、真剣な視線で睨みつける。
「おばさんの言う通り、噂通りだったな」
 律は思いっきり、止のことをなじっていた。
「お、君もいい体してるしよう……」
 気がつくと止の手が、律の背に触れている。
「くっ!」
 怒り狂った律。無意識のうちにトーキックを入れていた。
「あがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 止の股間に当たったらしく、奇声をあげながら、金的を抑えて止は逃げ出した。

「……ったく、しつけえ野郎だ。で、今回はどうしたんだ?」

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