第3部:学祭2日目
第11話『猛撃』
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だ。
このまま外においておくわけにはいかないだろう?」
「それもそうね」
「それに、このまま1人にさせていたら、親父は絶対、狙ってくるだろう……」
親子ゆえか、父親の行動が目に浮かぶように、誠には感じられた。
「あなたも、」母は誠に、「唯ちゃんのことが好きなのね……」
誠は、頬を染めてうなだれ、
「そ、そうだよ……。でも、俺にはほかに……」
「まあまあ、もし、唯ちゃんへの思いが、本当に強いのならば、世界ちゃんや言葉さんだってわかってくれるでしょう。
私は後で食べるから、唯ちゃんに世話してあげなさい」
「あ、ありがとう……」
「どうでもいいけど、無精ひげがそのままよ」
いっとなって、顎のあたりをなぞると、中途半端にひげが生えている。
「やっべえ、唯ちゃんにかっこ悪いところ見せちゃったかも」
「ま、あんな態度じゃ気にしない口でしょう。急いで剃ってきなさい」
母の厚意に甘え、急いでひげをそり、誠は唯と一緒に、向い合せで食事をすることになった。
外はようやく、濃紺から快晴の青に変わろうとしている。
「ねえねえ、これマコちゃんが作ったの?」
誠の作ったスクランブルエッグを食べながら、唯はテーブルのバスケットに入っている物を指さす。
唯と誠をはさんで位置している、鳥の巣のようなバスケット。
その中にあるのは、自分が暇にまかせて作った、沢山の七宝焼きとシルバーアクセ。
種類も、ブローチからペンダントまで、沢山と言っていい程ある。
「そうだよ。それはシルバークレイで、粘土のように形ができるんだ。割と簡単に作れるんだよ」
誠は穏やかに答えた。
母の趣味で、自分も子供のころから作っていたが、いまでは素人が作ったものとは思えないほどに形が整い、ブローチやペンダントとして、一応なしている。
本来ならこれは……学祭の日、強いきずなの証として、世界に渡すはずだった。
それが唯ちゃんと会ってから、曲折の末、結局世界と絶交状態となり……。
今頃彼女は、何をしているだろう。
また傷ついて引きこもってるかな?
バスケットの中でキラキラと輝いているアクセサリーを見ながら、誠は思いを巡らせた。
「ねえ、これ1つもらっていいかな?」
再び唯が、白銀色の指輪を指さして問う。
たしかに、沢山つくって沢山余してたから、渡すのも悪くなかろう。
「うん、いいよ」
「やった!ありがとう!!」
ガタンッ!
思わず唯は立ち上がり、テーブルの紅茶をこぼしてしまう。
「唯ちゃん、またこぼしてるじゃん。それに、ほら、口にスクランブルエッグがついてる」
「あはは……」唯は苦笑いをしながら、誠の手が動くより早く、ティッシュで紅茶を吹き、スクランブルエッグをとった。「ベラ・ノッテの時と同じ
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