第3部:学祭2日目
第11話『猛撃』
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止……って知らないよね。お尋ねものがこの榊野に来たんで、捕獲して警察に突き出すつもりらしいの。甘露寺も気をつけたほうがいいかもしれないな」
「そうなのかあ……」七海は顔をしかめ、「じゃあうちらも、ひょっとしたら桂がどうのこうの言ってる状況ではなくなるかもなあ……」
「まだ、桂に何かするつもりなんだ」
梓はちょっと不服だが、正直今は、沢越止や桂よりも、唯先輩のことが気になる。
直接電話しようとした。
……。
が、通じない。
「ああもう、唯先輩は何をやっているのやら」
苛立って今度は、律のところに電話をする。
「あ、もしもし、律先輩ですか。」
「梓か……。どうした?」
「唯先輩、どうしました?」
「それはね……」
律は、今まで起こったことのすべてを話す。
沢越止が唯の家をマークしていたこと、運よく唯はその時留守だったこと。
誠の家に行ってると考えられること。
「そんなにしつこいんですか、沢越止は」
「そのようだな。正直今は、伊藤にすべてを任せるしかないのかもしれねえ」
「あんなヘタレな奴に……。ムギ先輩もSPを用意してきたのに……」
梓の寒気は、さらにひどくなる。
いっそのこと、自分で唯を守ってやりたい気もしたが、さりとてどこへ行ったのかもわからない人を特定するなんて、できない。
具合の悪くなった梓、電話を切る。
「どうだって?」
七海が口をはさむ。
「沢越止が唯先輩を狙っているって。唯先輩は、ひょっとしたら伊藤のところにいるかもしれないって。」
「そうか……。世界の奴、平沢さんに思いを託すって言ってたけど……。
正直、どうしたらいいのか、分からないな」
七海は虚空を見上げる。
梓は、とりあえずここで待機することを、決めた。
誠に、唯先輩を任せてみるか。
原巳浜駅は高架線ではなく、普通の地面に面した線路になっている。
駅で切符を買って、唯と誠は、まだ通勤客が残っているプラットホームに行った。
2人、腕を組んで。
目の前を、銀と赤の急行電車が通過する。
周りの人たちは、この高校生カップルを憧憬の目でちらちら見るが、後は取り合わず、新聞を読んだり携帯を見たりしている。
唯は通勤客の合間を、誠と一緒に通ってゆく。
表情は、晴れやか。
「本当に、いい笑顔だね」
誠は、微笑む。
「……実は、西園寺さんからも同じこと言われたんだけど、ほんと、嬉しいな……」
「そうなんだ。世界も……」
唯の左薬指には、誠のシルバーアクセがある。
ほほえむ唯が、誠には愛おしくてしょうがなかった。
唯は、きょろきょろと周りを見渡した後……。
さりげなく、誠の唇に、口づけを交わした……。
彼は頬を染めるものの、驚かない。
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