第3部:学祭2日目
第11話『猛撃』
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『ごめん。今日はちょっと学祭に行けなさそうだ。
唯ちゃんがうちに来て、親父に狙われている唯ちゃんを、守らなくちゃいけなくなっちゃって。
唯ちゃんのことが一番好きってわけじゃないけど、今はあの子を守ってやりたい。
誠』
「平沢さん……どうして……!」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
例のごとく心が、ちょっかいを出してくる。
「平沢さんが、誠君ちに来て、誠君は平沢さんを守ってあげたいって……」言葉は不安げな声になりながらも、「とりあえず、先を急ぐから」
あわてて玄関のドアを開け、日本庭園のような庭を駈け出し、道路に出る。
が。
「……!!」
体格のいい女生徒3人に、取り囲まれてしまう。
「あんた、まだ伊藤に付きまとってるの?」
その3人のリーダーである短髪の女子生徒が、言いがかりをつけてくる。
「関係ないです。私は誠君の彼女ですから」
「まだそんなこと言うのかい!? あんたがそんなだから、西園寺さんも根負けしちゃったんじゃないのかい? 七海さんの話じゃ、西園寺さんは家で落ち込んでいるとよ」
「知りません! そんなの!!」
ムキになって言い返す言葉だが、長い髪をつかまれてしまう。
「わかってないねえ! ま、ずっとむかつく奴だったけどさ、あんた!」
そのままぐいぐいとひきずられていく。
心は、姉の様子をずっと見ていたが、我慢しきれず外に出て、
「お姉ちゃん!」
「大丈夫、私は大丈夫だから……。それより早く、原巳浜に行って! ひょっとしたら誠君も電車に乗り込むかもしれないから!」
泣きそうになりながらも、心は、
「う、うんっ!!」
と、七海の手下に気づかれないよう、すぐに横に隠れてやり過ごし、原巳浜駅に向かった。
「……世界の奴、やっぱり休みか。」
日がようやく、地面のコンクリートや校舎の壁を明るく照らし始めたころ。
学校の正門で、七海は壁にもたれる形で待機していた。
傍らには、子分の男子生徒がいる。五分刈りで、小柄。
「しかし、本当にあのムギって人、来るんですかねえ」
子分が七海に尋ねる。
「大丈夫、きっと来ると思う、ムギさんは」
「それにしても、七海さんを信用していたムギさんを、あんな形で引き入れなくてもいいんじゃなかったんですかねえ……」
七海は一瞬、唾を呑んだが、すぐに平静を装って、
「一種の賭けさ。大人しい子だから、ちょっとすればこちらになびくと思っていた。
……ともあれ、やってみると結構後味が悪いし、まさか世界が伊藤をあきらめちまうとはな……」
「……ま、俺も伊藤みたいな顔だったら、もっといい生活を送れたかな、なんて思うけど……」
「顔よりハートだろ。少なくともハートはあんたの方が上。とにかく、世界の思いを、尊重してやらなきゃな……」
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