暁 〜小説投稿サイト〜
えすえふ(仮)
第一話
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
さ……」

独自の理論を展開する彼女に対して突っ込んだことを言えない俺だったが、ふと気がつくと外がざわざわと騒いでいたことに気づいた。

「なんだなんだ?」 「ひでえなこりゃ。隕石か?」

どうやら自分の家から発された爆音や惨状に気づいた近所の人が野次馬に集まってきたようだ。

「そもそもだ!家がこんなことになったんだから人なんてもう住めないよ!それに近所になんて説明すれば……」

不可思議な少女に気を取られて気づいていなかったが、現実的に見ればこれはとんだ大事件だ。
家は半壊、原因は少女の落下、こんなこと近所にどう説明すればいいかと焦っていたが、

「そうだ!まずは迷惑をかけたお詫びをしなければ!」

「お詫びなんて何すんだよ!そのお詫びでこの壊れた家がなんとかなるのかよ!」

もう大汗を流しながらいろんなことが頭をよぎった。先祖代々の家のこと、ここで暮らした家族のこと、
遊んだゲームやパソコンのデータのことなど、こんなことどうにもならないとぐるぐるの頭で彼女に叫んだが、帰ってきた答えは意外なものだった。

「なるぞ」

え?と振り向くと彼女はどこから取り出したのか、何やら右手に小さな銀色の道具を持っていた。
そしてその道具を持った手で俺の左手を取り、ふたりの手のひらを合わせ、道具を包み込んだあと、お互いの指が重なり合うように握り締めた。

「このまま強く念じるんだ。家が元どうりになりますようにって」

「い、いったいなにを……」

「いいから、これはそうゆう道具だ、さあ」

彼女の手は小さかったがとても暖かく、さあと言ってくれた彼女の微笑みは柔らかくて、心が安らいだ。
この道具がなんなのかはさっぱりわからなかったが、彼女の笑顔に落ち着かされ、ゆっくり目を閉じ、祈った。
昔から今までずっと自分たちを守ってくれたこの家を、数々の名作ゲームをプレイしたこの家を、
アニメで大笑いしたこの家を、そして……



家族との大切な思い出のあるこの家が……元どうりになりますように。



再び目を開けるとそこには自分と同じように目をつむり、祈っているのであろう彼女、そして大穴がなくなり、床や家具が元通りになった、
以前のままの家だった。

「こんな……嘘だろ……」

その言葉を聞いて目を開けた彼女がにこやかな笑顔、そして空いている左手の親指を立てて言った。

「よっし!大成功!」

俺があっけにとられていると、彼女は握った手を離し、その道具を自分の両手で包み込んだ。
すると今度はその道具が、ホイッスルの形になり、彼女の手から出てきた。

「あとは外の人たちだな。私が戻ってくるまでずっと耳をふさいでいるんだ。」

「どうゆうことだ?」

「記憶がなくなってし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ