Development
第三十話 融和
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
夏、セシリア、鈴、そして簪の8名である。もし簪の専用機が間に合わなければ奇数になってしまいペアが作れなくなり、タッグマッチが成立しなくなってしまう。
そのため学園側は整備課の派遣も考慮に入れて簪への協力を申し出ているのだが、簪の反応が芳しくない。最近は少しずつ態度も軟化しており、また襲撃事件の折にそれぞれが助け合い事件を収束したところを目の当たりにしている。あとは切っ掛けさえあれば、といったところだが未だ自分を変えられずにいた。
しかし、その機会は意外なところから齎された。
「信じらんない! アイツは女の子との約束をなんだと思ってるのよ!?」
既に見慣れた光景となりつつあるが、この日も鈴が紫苑と簪の部屋に来て騒いでいる。
しかし、今までとは比べ物にならないくらい憤慨している鈴を見て何事かと紫苑は彼女を宥めてその話を聞く。相変わらず簪は無関心を装いつつも話は聞いている。少しは手伝ってほしいと思う紫苑だがどこ吹く風だ。
「……中学の頃にね、約束したのよ。料理が上手になったら毎日酢豚を食べさせてあげるって」
酢豚? 味噌汁じゃなくて? という疑問が当然紫苑は浮かんだが、中国人である彼女ならそれでも問題ないのだろうと納得した。そしてその後にそれってプロポーズなんじゃないの? と気づく。
「だ、大胆ですね」
「あ〜う〜、あの時は勢いで言っちゃったのよ。でも……でもよ! あの馬鹿、なんて言ったと思う!?」
どうやら一夏の朴念仁ぶりは相当なようである。100人が聞いて99人はそれがプロポーズに近い言葉であると理解できるはずだ。しかし、その残りの1人にあたる朴念仁、それが一夏だった。
彼は『酢豚を奢ってもらえる』と勘違いしたらしい。鈴の家が中華料理の店だったのが要因であろうが、それでもあんまりといえばあんまりだ。鈴の心中など知る由もない一夏はタダ飯が食べられると喜んでいた。
もちろん、激昂した鈴と、彼女が何故怒っているのか理解できない一夏は口論となり、言ってはならないことを言ってしまう。
『うるさい、貧乳』
その瞬間、ガラスに亀裂が走ったような音が確かに部屋に響いた……何故かその話の最中の紫苑の部屋にも。
「……潰す」
地獄の底から響いてきたかの様なおどろおどろしい声が予想外のところから聞こえてくる。
「あ、あの……更識さん?」
「ど、どうしたの?」
紫苑も当事者であったはずの鈴までも何事かとその声の方を向くと、そこにはやや俯いてプルプルと震えている簪の姿があった。
「西園寺さん」
「は、はい!? なんでしょう?」
いきなり指名されてビクッとする紫苑。その弾みで揺れた胸元を忌々しげに見つめた簪の顔を見て紫苑と鈴は自然とそのまま視線を下方に向
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ