暁 〜小説投稿サイト〜
BLUEMAP
第一章 〜囚われの少女〜
千一夜の夢
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
は思う。望んでもないのに生まれる事を強いられ、勝手に奪われるというのか。
「何て自分勝手なの?」
 吐き捨てる。
「命とは何ですか? 運命とはどこまで勝手なのですか!?」
 天に嘆く。
 そして少女は嘲笑した。
「ああ、神様……。運命によって私を弄び、掌で命を転がし、そして握りつぶす。それで満足でしょうか? さぞ滑稽な事でしょう? こんな姿を見て、お笑いになっているのですか?」
――そうだというなら、それも本望。それでも、暇つぶし程度でしかないのだろうけれど。
 そう思う事で自分に暗示をかける。
「せめて――それならせめて、あなた様の涙を下さい」
 心の底にある、隠しきれない感情が湧き上がってくるような気がした。
 彼方の空を仰ぎ、恵みの雨を待ち望む。勿論雨などは見たこともないのだが。
「一滴ばかりで構いません。花のように短い人生を演じた私へ、一滴ばかりの憐れみを」
(淡く、優しい。終わりのない夢をください……)
 少女は何かを求めてか、虚空へ手を伸べる。
「お望みとあれば。今すぐにでも、あなたの元へと飛んでいきたい」
――姿を鳥に変えて。
 生まれ変われるのならば。何も知らない、不自由や自由でさえも知らない、罪深き鳥の姿に生まれ変わりたい。

 少女の手のひらにあったのは、一滴のしずく。


――


 そうしてさらに夜は更け、空には赤く燃える火が登ろうとしていた。

 その頃王宮には、何やらざわざわと風が吹き始めていた。
「女王様、大変です! ――」


                              −第八幕へ−

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ