暁 〜小説投稿サイト〜
碁神
俺の人生順風満帆です。
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人物だと思われているらしい。
 こうなるともう楽しくてたまらない。

 そんな訳で、俺の唯一の趣味はネット碁なのだ。
 今日も今日とて早速ログイン。
 すると一拍置いてすぐにたくさんの対戦申し込みが送られてくる。
 あーもう、そんなにたくさん申し込まれても困っちゃうゾ! なんちゃって!
 ……女の子にもこれくらいモテりゃなぁ……。

 ふと、大量の申し込みの中に見知ったハンドルネームを見つけた。
 すぐに了承しようとして、悩む。
 ハンドルネーム『Mituru』。 コイツと初めて打ったのは忘れもしない小5の時。
 プロ以外には滅多に負けることが無くなっていた俺が同い年の奴と半目差の激戦になったのだ。
 しかも、俺が白石。 盤上では俺が負けていた。
 あ、一つ言っておくけど、その後接戦が多いとは言え俺がMituruに負けたことは一度も無いからな!
 今まで一番コイツと打ってきたけど黒石でも白石でもきっちり勝ってきた。 俺のが強い。 うん。

 ……話がそれたな。

 ともかく、初めて打った後、Mituruは凄まじく興奮してて、俺もテンションが上がっていたのだろう。
 うっかりチャットに応じてしまったのだ。
 それ以来、コイツにチャットを持ちかけられるとつい応じてしまう。

 だけどまぁ、それは良い。
 ただ、最近のコイツは執拗に俺のリアル情報を探り出そうとするのだ。
 そして二言目には『何故プロにならない!?』。
 最初に書いたとおり、俺は現状に大満足してるし仕事にやりがいを感じてる。
 碁は好きだが、プロとかの世界のことは良く分からないし、そんな物になるつもりはない。
 だから、プロになれとしつこいコイツが非常に煩わしいのだ。

 じゃあ打たなければいいんじゃ?と思われるだろうが、コイツと碁の相性が非常に良いのだ。
 負ける気は一切しないが、要所要所で打ち込まれる考え込まれたドキツイ一手とそれにどう応じるかの駆け引きがもう最高に楽しい。
 まだ負けもあったころから打っている相手で、実力差はあまり無い。 でも今まで勝率100%なだもんだから、コイツには負けられない!とつい燃えてしまう。
 ライバルは誰かと聞かれれば迷うこと無く『Mituru』だと答えるだろう。

 それで最近は毎回迷うのだ。
 受けるか受けないか。
 数秒悩んで、結局受けるんだけどな。
 楽しい対局の魅力には勝てません。

 というわけで、俺は対局申し込みに承諾ボタンで返事を返した。
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