ロンリー=ソルジャー
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。
迎えの輸送機がやって来た。四発の大きなやつだ。うちではハーキュリーズと呼んでいる。アメリカ軍のものを自衛隊でも使っているのだ。中々便利な使えるやつだ。
「それじゃあ行くか」
「はい」
僕達は先任陸曹の言葉に頷いた。そして順番よく乗り込んでいく。
ふと後ろを見た。するとイラクの子供達が楽しそうに手を振っていた。
「別れの挨拶かな」
「案外帰ってくれて嬉しいのかもな」
「まあそれもあるだろうな」
先任陸曹は僕達の言葉に頷いた。
「建前はどうあれ俺達は占領軍だからな。去ってくれて嬉しいのは確かだろう」
「そうですか」
わかってはいるつもりだったがそう言われるとやっぱり寂しいものがあった。
「けどそれだけじゃないのも確かだな」
「それだけじゃないって」
「あの子供達の顔を見ろよ」
先任は僕達にこう言った。
「あの顔見たら俺達が単に占領地の奴等だけじゃないって思っていたのがわかるだろ」
「あっ」
見れば名残惜しそうな顔だった。どうやら僕達が帰ることが寂しいようだ。
「俺達のやったことは無駄じゃなかったみたいだな」
「そうなんですかね」
「そうじゃなかったらあんな笑顔はないだろ。あれを見て何か救われたよ」
そう言う先任の顔は実に晴れ晴れとしたものだった。
「何かな、ここに来てよかったってはじめて思ったよ」
「はじめて」
「あ。あれも駄目、これも駄目でピリピリしっぱなしだったけどな。あの笑顔でそれも無駄じゃなかったんだなってわかったよ」
「あの子達の役には少しでもなれたからですか」
「ああ。兵隊ってのは戦うだけが仕事じゃないからな」
むしろ僕達は戦うこと以外の仕事ばかりしているが。
「嬉しいよ。ああして感謝してもらえるとな」
「ですね」
「おおい」
輸送機の奥から隊長の声がしてきた。
「はい」
先任がその声に応えた。
「もう皆乗り込んだか」
「ええ。今乗り込みました」
「それじゃあ点呼するか」
「はい。イチ」
まず先任が番号を言った。それから順番に番号を叫んでいく。僕も当然ながら叫んだ。それが終わると皆ちゃんといることがわかった。これで一安心だ。
「よし、皆いるな」
隊長は点呼が終わったのを聞いて満足したようにこう言った。
「それじゃあ帰るか。皆忘れ物はないな」
「はい」
「あったら次の奴等のものだからな。いいな」
「何か俺達の後に来る奴等ってそれ考えると恵まれてますね」
「忘れなければいいだろ」
「ははは、そうでした」
「もう一回聞くが忘れ物はないな」
「はい」
「よし、じゃあいい」
隊長はそれを聞いて頷いた。
「後ろを閉めろ。日
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