ロンリー=ソルジャー
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。そしてこう呟いた。
「多分な」
僕はそれに頷いた。そういえばそうなのだと思った。
「何か時々何でこんなところにいるんだろうって思っちまうよ」
「そうなのか」
「ああ、俺はな」
同僚は言った。
「金が欲しくて志願したけれど。砂と肉体労働ばかりじゃな」
「肉体労働は俺達の専門職だぜ」
「ったく。空自さんや海自さんはいいよな。美味いもん食えてそれで基地で優雅に休める。おまけに可愛い娘ちゃんや綺麗な服が待ってるんだ」
確かにうちの女性隊員はあまり綺麗なのがいない。何かこう考えると本当にうちは三つの自衛隊の中で一番恵まれていないのじゃないかと思う。
「何かなあ。泣けてくるぜ」
「じゃあ戦闘地域にでも行くかい?」
「それができないのはわかってるよな」
「ああ」
僕は頷いた。
「アメちゃんに言わせりゃ死なないだけマシだってことだな。おまけに俺達はここの人達に評判がいい」
「それは俺達の努力のおかげだろ」
「それはまあそうだな。しかしなあ」
何かこいつは今日はぼやいてばかりだなと思った。普段はそれ程でもないのに。やっぱりストレスが溜まっているのだろうかと思った。
「ああ、仕事が終わって日本に帰りたい。金貰ってよ」
「日本にか」
どうやらぼやきの原因はこれだったらしい。
「それでまず派手に飲みまくってやる。ビールでもウイスキーでもな」
「ああ」
ここはイスラム圏だ。表向きは禁酒だ。だから僕達もおおっぴらには飲めない。あまり酒が強くない僕にはあまり関係のない話だったがこいつには辛いものらしい。
「そっから彼女とどっか行ってな。ああ、早く帰りてえ」
「彼女か」
僕はそれを聞いて自分の彼女のことを思い出した。
「そうだよな」
「何だよ、自分の彼女のことも思い出したか」
「うん」
僕はそれに頷いた。
「ちょっとな」
「ちょっとかよ」
同僚はそれを聞いて屈託のない笑みを浮かべた。
「他には何か思い出さないのかよ。彼女がちょっとだと」
「何かな、砂ばかりだな。思い出すのは」
「それは言わない方がいいぜ」
見渡す限り砂ばかりだ。確かにあまり思い出したくはないものだ。
「縁起でもねえしな」
「そうだよな、確かに」
これには頷いた。もう砂のことは考えないでおこうとさえ思った。
「まあ期限が来たら帰れるさ」
「ああ」
僕達はアメリカ軍とは違う。それは安心できた。
「それじゃあそれまで辛抱するか」
「そうだな」
そして僕達はまた仕事に専念することにした。こうして日々を過ごしていた。何となくイラクの子供達とも少しずつだが打ち解けてきたような気もしてきた。するとそこで帰還の日となった
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