ロンリー=ソルジャー
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とりわけ厳しく言われている。
「俺達はそれだけはやってはならない」
曹長は話を続けていた。
「他にもやってはいけないことばかりだがな。とにかく攻撃されてもはやまったことはするな」
「はい」
僕達はそれに応えた。緊張で顔が引き攣っている仲間もいた。皆戦場にいるような顔だった。ある意味それは当たっていた。確かに僕達は戦っていたのだ。
「何か俺達の方が厳しいよな」
作業中に同僚が僕に対して声をかけてきた。
「あれも駄目、これも駄目。何かいつも監視されてる気分だぜ」
「マスコミもいつもいるしな」
「ああ。あいつ等なんて気楽なものだよ」
同僚は額の汗をそのままに顔を上げてこう言った。その向こうにはマスコミの車が一台あった。いつも自衛隊の悪口ばかり書くので有名な新聞社だ。
「俺達のことを悪く書いてりゃいいんだからな。碌に見ずにな」
「それで俺達より給料はずっといいんだ。やりきれないよな」
「そうだな」
同僚は僕の言葉に頷いた。
「俺達はまあ志願してここに来ているんだけれどな。けれど戦争したくて来ているんじゃない」
「ああ」
「自衛隊の仕事を一度でもいいからしっかりと見てみろよ。訓練とこうした災害とかそんなのの救助ばかりだぜ」
「特に俺達陸自はな」
「ああ」
僕達陸上自衛隊は陸空海三つの自衛隊の中で一番大きい。だが扱いは一番悪いとよく言われる。空自さんや海自さんのことはあまり知らないがたまにそう言われる。少なくとも飯は兵隊が持ち回りで作っているのでまずい。これは否定しようがない。
けれどまあ給料はいい方だとは思う。食事はまずくても只だしボロボロでも隊舎がある。もっともそこには殆どおらず彼女とアパートを借りているけれど。
「そんなの知ってるのかね、連中は」
「知っててもそんなの報道しないだろ」
「だろうな」
同僚はそれに頷いた。
「そんなの報道しろよ。記念写真一つ撮るのにもどれだけ大変か」
「全くだな」
「ああ」
これは本当に大変だった。隊長も僕達も写真一つ撮る為に服を整え制限された自らか顔や身体を綺麗にしてにこやかな顔で写真を撮るのだ。自衛隊は何よりも見栄えを気にする組織なのだ。これでも僕達はましらしい。海自さんなんかはもっと大変だと聞いたことがある。本当かどうかわからないが本当なのだと思う。
そしておまけに勉強もしなくてはならない。イラクの文化や習慣、簡単な言葉までも。これはカンボジアに行った時から変わってはいない。何もかもががんじがらめだった。
隊長も写真は自分がはっきりと映るように、そして子供達とバランスよく映るように綿密に計算されて写真撮影に挑んでいるのだ。まるでタレントのグラビアのようだ。何でここまでやらなければな
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