第七十一話 全ての光でその九
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「ではです」
「闘いを終えますか」
「願いが適うのなら戦う理由はありません」
澄み切った顔だった、実に。
そしてその顔でだ、彼は上城と樹里に顔を向けた。
そしてすぐにだった、その頭を深々と下げてから言った。
「これまで。申し訳ありませんでした」
「戦いのことですか」
「迷惑と心配をかけました」
だからだというのだ。
「このことは頭を下げてもどうにもなりませんが」
「先生」
上城はその高代にだ、静かにこう告げた。
「頭を上げてくれませんか」
「頭をですか」
「先生に頭を下げられたら困ります」
「そうです、私達だって」
二人にしてもだというのだ、このことは。
「先生と同じなら」
「そうならですか」
「先生と同じことをしていたかも知れないです」
こう言うのだった。
「綺麗事だけではどうにもならないですよね」
「それは」
「そうです、その時は」
若し戦うことによって願いが適うのならというのだ、樹里でもだというのだ。
「どう考えてどう決めるかわからないです」
「僕も。考えてみると」
上城もだった、このことは。
「僕は特に願いがないですから」
「だからだというのですね」
「ですから」
だからだというのだ。
「先生のことを否定出来ないですから」
「そうですか」
「じゃあこれからも」
上城は笑顔で言う、樹里もその隣で彼と同じ顔になっている。
「宜しく御願いします」
「先生として頑張って下さい」
「では」
高代も笑顔になった、そしてだった。
顔を上げた、そのうえで。
その手に持っている剣を見てだ、聡美達の方を振り向いて問うた。
「私は戦いを降ります」
「そうされるのですね」
「それでこの剣ですが」
「戦いを降りられるのですね」
聡美はこのことをあらためて彼に問うた。
「そうされますね」
「はい、そのつもりです」
「それではです」
そう考えているのならというのだ。
「その剣を置かれて下さい」
「剣をですか」
「貴方の前に。そして」
さらにだというのだ。
「宣言して頂ければ」
「戦いから降りると」
「そうです」
それでいいというのだ。
「そう仰って頂くと」
「私の戦いは終わりですね」
「そうなります」
こう高代に話す。
「そうされれば」
「では」
そこまで聞いてだ、高代はあらためて頷いた。
そうして実際に剣を彼から見て水平、横にその前に置いた。そのうえで。
「これで私の戦いは終わりです」
こう言ったのだ、すると。
目の前に横に置いたその剣は白い光を放ちその中に消え去った、そして後には何も残してはいなかった。
その消える姿を見届けてだ、聡美は高代に言った。
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