第七十一話 全ての光でその八
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「だから勝負はついているんだよ」
「まさか勝って兜の?」
「うん、今もだよ」
だからだというのだ。
「先生はまだ安心出来ないよ」
「じゃあ今は」
「心臓だから」
このことが重要だというのだ、高代が魔犬の心臓を貫いたことがだというのだ。
「そこを貫いたね」
「血ね」
「ケルベロスは毒の怪物だから」
「じゃあその血も」
「うん、猛毒だよ」
「だからなのね」
「若しその血を浴びれば」
それも少しでもだというのだ。
「同じだよ、闘いに勝てても」
「先生は」
「だからここは」
どうするか、そうだというのだ。
「先生がね」
「どうすればいいの?それじゃあ」
剣はまだ刺さったままだ、魔犬の心臓に。
それはまだ抜かれていない、それを抜けば。
「下手に抜けばね」
「今は栓なのね」
「うん、それになっているよ」
高代の剣がだというのだ。
「だからね」
「それじゃあ抜けば」
栓をしていたものが抜ければというのだ、その時はだ。
「出て来るのね。血が」
「うん、そうなるよ」
その毒がだというのだ。
「そしてそれを少しでも浴びればね」
「先生は死ぬのね」
「そうなるから」
だからだ、今もだというのだ。
「危ないよ、やり方次第でね」
「先生が勝っても」
「勝って終わりじゃないから」
上城はまた樹里にこう話した。
「勝ってから。闘いをどう収めるか」
「試合と違うのね」
「試合はね」
剣道の試合だ、それはというのだ。
「二本取って終わりじゃない」
「うん、そうよね」
「けれどね、闘いは違うから」
「二本取って旗が上がっても」
「うん、まだあるんだ」
無論試合でもその後で蹲踞がある、しかしそれでもなのだ。
「どう収めるかがね」
「じゃあ」
「先生がどうするかだよ」
全てはこれに尽きた、高代の今だった。
そしてだった、その高代はというと。
剣に最初から込めている力をだ、全て入れた。
そしてだった、その力をケルベロス、心臓を貫いている怪物の中に全て放った。するとそれでだった。
動きを止めていた魔犬の全ての目と口からだった、光が溢れ出て。
それが全身を破りだった、魔犬の身体は。
まるで紙が千切られていく様に裂かれていった、その身体も。
光の中に消えていった、そして残ったものは。
何もなかった、それでだった。
高代は闘いに勝ちその後も収めた、そのうえで立っていた。その彼に聡美が言った。
「終わりましたね」
「はい、それでですね」
「貴方の戦いは終わりました」
これで全てだというのだ。
「願いは適います」
「そうですか、それは何よりです」
高代はここまで聞いて笑顔で呟いた。
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