第二十三話
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それから2人の勝負は続いた
あおいはシンカーを中心にストライクゾーンの端を攻めていた
しかし、虹太郎はその全てをバットに当て、球を真後ろに飛ばしていた
あおい
「ハァ…ハァ…」
ついに30球目、あおいも肩で息をし始めた
カウントは2ストライク2ボール
つり球のつもりでストレートとシンカーを投げたが、虹太郎は無反応だった
虹太郎
「早川さん、もう諦めてくれ。俺は君を苦しめたく無いんだ」
投げてきたストレートを真後ろに飛ばして、ついに虹太郎が口を開いた
あおい
「まだ…終わって無いよ。…三振か…ヒットか…ハッキリさせようよ」
最早、焦点が定まってるかすら解らない程目が虚ろなあおい
気力だけで投げていると言っても過言ではない
啓一
「虹太郎、これ以上は彼女が危険だ。早く終わりにしてやれ」
矢部
「そうでやんす。あおいちゃんが可哀想でやんす」
啓一も矢部も同意見のようだ
虹太郎
「(そうだよ、早く終わらせよう。そして諦めてもらうんだ。俺みたいな卑怯で弱い奴なんか…)」
改めてバットを握り直す虹太郎
しかし、予想外な言葉が聞こえてきた
あおい
「七橋君ってさ…優しいんだね」
虹太郎
「……え?」
優しい?俺が?
こんなに苦しめているのに、何でそんなことが言えるのだろう
あおい
「だって…ハァハァ…ボクがミス…するまで…ハァハァ…チャンスをくれてるじゃない」
虹太郎
「(違う、これはただ勝負を先延ばししてるだけなんだ。逃げてるだけなんだ…)」
尚もストライクゾーンに入るボールをカットし続ける
球数50球目、カウントは2ストライク3ボールと後が無くなっていた
あおい
「七橋君が…野球…やりたくない…理由は…解らない、けど…」
そこまで言うと、あおいは軽く息を整えて叫んだ
「ボク達は君を必要としてるんだ!こんなにスゴい才能を持った君と一緒に野球がしたいんだ!」
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