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迷子の果てに何を見る
外伝その一
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たせておきたくなかったしな。オレはただの夢だった。それで良いじゃないか。

「帰っちゃうの?」

不意に声をかけられた。
振り抜くとそこにフェイトが立っていた。

「酷いよ、黙って帰っちゃうなんて」

「これはさ、悪夢だったんだよ。娘を亡くして自らも病に冒され、命を弄んだ女性が見ていた悪夢。それが覚めた今、夢の中の住人であるオレは消えなければならない」

「夢なんかじゃないよ」

そう言ってフェイトがオレの手を握った。

「私がレイトの事が好きだって言うこの気持ちは絶対に夢じゃない」

頬を紅く染めながら、今にも泣きそうな顔をしている。
そんな彼女を握られていない方の手で頭を撫でてやる。

「ごめんな、オレはその気持ちに応えてやる事が出来ない。お前の前に思いを告げて待っていてくれている人がいるんだ。だからオレは帰らないといけない」

その言葉を聞いてフェイトの瞳から涙がこぼれた。それでも必死で泣かないようにしようと我慢していた。

「分かってた。レイトは私じゃない誰かを好きなんだって。でもそれでも私はレイトの事が好きだった。レイトに傍に居て欲しかった」

「ごめんな」

「いいの。でもその人よりも早く出会えてたら私を好きになってもらえたかな?」

「今でもお前の事は好きさ。でもオレを待っている娘の方が好きだった。それだけだ」

「そっか。ならいつかレイトを奪いに行っても良いかな」

「なら強くならないと無理だな。彼女はかなり強いぞ」

「うん、頑張るよ」

無理に笑おうとして顔がぐしゃぐしゃに崩れるがオレは何も言わない。このまま話し続けていては帰る気持ちが揺らぎそうだった。だからここで終わる。ジュエルシードから魔力を吸収して次元転移魔法を展開する。後は起動するだけだ。

「最後に1つだけ良い?」

「ああ」

「名前で呼んでください。テスタロッサでなく私だけの名前を」

「......また会えるのを待っているよ。フェイト」

「絶対に会いに行くから待っててね。レイト」

フェイトは笑いながらオレを見送ってくれた。その笑顔はとても美しかった。


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