第一章
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ジェーンだけどな」
話が本題に入った。
「あいつにも知らせないと駄目だろうな」
「そうだな」
それだ。俺が一番気にしていたことだった。
恋人が死んじまったってことは絶対に伝えないといけねえ。だがそれを誰が、どうやって伝えるかだ。それが問題だった。けれどそれができるのは俺には一人しかいないように思えた。
「俺が行くよ」
そう、俺しかいなかった。
「御前がか」
「ああ、だから任せておいてくれよ」
にっと口の端を歪めさせた。作り笑いだ。
「それでいいよな」
「ああ、じゃあ頼むぜ」
俺の話を聞いてくれた。これで決まりだった。
「じゃあ今からジェーンのところへ行って来るな」
「それじゃあな」
「他のことは頼んだぜ」
「わかった」
こうしてバイクに乗ってジェーンのところへ向かう。そしてジムのことを伝えたのだ。
「嘘・・・・・・」
アパートの玄関でそれを伝えた時ジェーンの顔が割れそうになったのは今でもはっきりと覚えている。忘れられるものじゃない。
「昨日まであんなに元気だったのに」
「バイクさ」
俺は言った。
「ハイウェイでな。事故っちまって」
「そう、それで」
「ああ、即死だったらしい」
俺はそれも伝えた。
「そういうことだよ。じゃあ」
「待って」
ジェーンは立ち去ろうとする俺を呼び止めた。
「ジムは・・・・・・死んだのよね」
「ああ」
俺はまた答えた。
「何度でも言うぜ。あいつはもう」
「・・・・・・わかったわ」
それを聞いたうえで小さく頷いた。それから彼女は言った。
「私もそこに行きたいわ」
「そこへって?」
「ジムが死んだ場所に。それでお別れを告げたいのよ」
「ジェーン・・・・・・」
俺はジェーンを見た。その顔には今にも泣きそうで、それでも強い決心があった。そんな彼を見せられちゃ俺もどうしようもなかった。頷くしかなかった。
「じゃあ行くか」
「お願いできる?」
ジェーンは俺に問い掛けた。俺はもう一度聞いた。
「どうしても行くんだね」
と。ジェーンはまた頷いた。それで俺達は今ここにいる。
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