Development
第二十九話 疑念
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Sを上手く扱いきれていなかったことを鑑みても、簪さんの力量はやはり楯無さんの見込み通りだったということだろう。さすがは楯無さんというべきか、妹のこととはいえよく見ているんだなと感心した。ただ、今の楯無さんを見ていると素直に褒める気になれないのは何故だろう。
「こんなところにいらっしゃいましたか、お嬢様」
突如、落ち着いてはいるものの若干の怒気を含んだ声が聞こえてくる。
その低く威圧感のある声に二人してビクッとなり、恐る恐る振り返るとそこには鬼……もとい、虚さんがいた。
「う、虚ちゃん?」
「お嬢様、試合が進むにつれて来場者も増えることが予想されます。簪様の試合が気になるのはわかりますが職務にお戻りください」
よっぽど大変だったのだろうか、虚さんは有無を言わせぬ勢いだ。
僕もこうしてここにいるだけに、少し悪い気がしてしまう。
「虚さん、でしたら私も……」
「紫音さんはこのまま簪様の応援をお願い致します。本音にもクラスの応援を許可しておりますので」
気を回したのはバレバレみたいで、逆に気を遣われてしまった。
虚さんは常々、普段の楯無さんでは考えられない簪さんに対する行動に頭を悩ませていたようで妹離れを望んでいた。自身も妹を持つ身で、何か思うことがあるのだろうか。
「だ、だったら私も……」
「お嬢様は仕事です」
「いや、しの……」
「仕事です」
「……」
「仕事です」
これ以上は無駄だと思ったのか、楯無さんがこちらに向けて懇願の眼差しを送ってきたので僕は思わず目を逸らしてしまった。
「う、裏切ったわね紫音ちゃん!」
楯無さんの叫びが徐々に遠ざかりながら聞こえてきて、再び隣を見たら既に姿はなかった。
虚さんが連行したのだろうか。簪さんの応援は僕にまかせて成仏……じゃなくて仕事してください。
あと、僕は裏切った訳ではないので人聞きの悪いこと言わないでください、どちらかというと虚さんに賛成です。
一連の騒動のせいで途中の試合が全く観れなかったものの、観たかった試合はこれから始まるようだ。
1組vs2組、オルコットさんと鈴さんの試合。どちらか一方を応援はできないけれど、二人とも頑張ってほしい、そう思いながら僕はこれから始まる試合にようやく集中することができる。
『お姉さまの素晴らしさ、今こそ証明してさしあげますわ!』
ふと、頭の痛くなるような内容の声がアリーナ中に響き渡る。
なぜか一部、周りの視線が僕の方に向いた気がする。こっちを見ないで……。
気づけばアリーナ内ではオルコットさんが鈴さんに対して腕を伸ばし、まっすぐ人差し指を向けている。ビシッという効果音が聞こえてきそうだ。
『あ〜ごめん、そのことなら謝る。紫音さんのIS
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